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深刻な採用難に直面する会計業界。会計業界経験者の業界離れ叫ばれる中、鍵を握るのは「ポテンシャル層の戦略的獲得」です。本記事では、MS Agentの知見に基づき、若手・未経験者を採用し即戦力化するための具体的な戦略と、繁忙期から逆算した採用スケジュールを解説します。
なぜ会計事務所は「人手不足」なのか?構造的課題と若手争奪戦
会計事務所の人材不足は、以下の「業界固有の構造的課題」と「外部環境との激しい競争」という複合的な要因により慢性的に深刻化しています。
業界全体の高齢化と人材供給経路の細さ
税理士の平均年齢は60歳を超えており、業界全体の高齢化が極めて顕著です。若手にとってはロールモデルとなる同世代の先輩が少ないことや、古い慣習に基づく業務フローが多いというイメージが先行し、魅力的なキャリアパスが見えにくい状態です。
事実、将来的な担い手となる税理士試験受験者の高齢化も進み、若年層(25歳以下)が全体の約2割にとどまるなど、人材のパイプラインが脆弱になっています。
一般企業経理との競争環境の激化
一般企業も人手不足が深刻なため、採用ターゲットを広げる傾向にあります。この結果、会計事務所での勤務経験者や、税理士試験受験者を積極的に採用する企業が増加しており、会計業界がターゲットとしていた人材の流出が加速しています。また、事業会社の方が福利厚生やワークライフバランスが整っている企業が多いこともあり、こちらも人材の流出を後押ししている要因です。
この採用難を乗り切るためには、経験者だけでなく若手未経験者を含む多様な人材の採用と、従来のアプローチ手法の見直しが不可欠です。
【参考資料】
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経験者採用難を乗り越える若手・未経験者採用戦略
現在、会計事務所では即戦力となる経験者の採用が困難なため、未経験者や新卒を含む若手人材の採用へ戦略的にシフトすることが不可欠です。若手・未経験者の潜在能力を見込んだ採用は、人材不足を解決する重要な戦略となります。
ここでいう「将来性のある人材(ポテンシャル層)」とは、未来に専門家として成長する可能性を秘めた人材です。彼らは「会計未経験求人」層として候補者が確保しやすく、育成によって即戦力化が可能です。
選考における評価基準は以下の通りです。
- 基礎知識: 簿記2級を最低限の評価指標とし、初期教育コスト削減に繋がる基礎知識の有無を測ります。
- 顧客対応力: 会計事務所はクライアントワークであるため、専門知識だけでなく、顧客との円滑なコミュニケーション能力や折衝能力が不可欠です。税理士資格への学習意欲や人柄に加え、営業経験を持つ候補者は、顧客対応力の点で高い潜在能力として評価できます。これらを重視することが、定着率向上と顧客対応力強化に直結します。
未経験者を採用するメリット
若手未経験者の潜在能力を見込んだ採用は、以下の組織的なメリットをもたらします。
組織の若返りと活力: 20代の流入により、硬直化した組織の若返りに直接的に貢献します。
新しい技術への柔軟性: クラウド会計などのデジタルツールへの適応力が高い世代が、業務効率化、DX推進の大きな原動力となります。
会計事務所で働く魅力:専門性とキャリア上の優位性
候補者の方に一般企業の経理職との比較優位性を明確に感じていただくため、以下のメリットを面接の場で積極的にお伝えください。候補者様がキャリアについて悩まれている場合、特に効果的です。
キャリアを深める専門性の獲得:一般企業の経理部門が自社の決算業務がメインで、税務に触れる機会が限定的なのに対し、会計事務所では顧問先の多種多様な業界・事業規模の会計・税務事例に日常的に触れます。これにより、高度な税務知識と幅広い実務事例を最短で体系的に習得でき、市場価値の高い専門性を確立できます。
経営の根幹に携わる多角的な視点と連携:会計事務所は顧問先へのサービスを提供する専門サービス業であり、一般企業の経理が担う内部管理とは業務の性質が根本的に異なります。複数のクライアントに対して会計税務処理を行うほか、経営者へ直接報告し、専門家として経営支援のアドバイスを提供します。経営者と対等の視点でコンサルティングを行い、事業の成長に直接貢献する大きなやりがいが得られます。
採用した若手を即戦力化する「教育・定着」の戦略的受け入れ体制
体系的な教育とキャリアパスの明確化: 段階的なカリキュラムと継続的なフォロー(メンタリング、人事面談)を整備し、昇進・昇格のモデルケースを具体的に示します。また、評価基準を透明化することで、若手のキャリアパスを明確にします。これにより、長期的なモチベーションの維持を図ることが重要です。
柔軟で魅力的な職場環境の制度化: 税理士試験の勉強時間を確保できる環境や、リモートワーク、フレックス制度といった柔軟な働き方が現在の潮流です。これらの制度を導入することは、定着率の向上に貢献するだけでなく、求人における強力な訴求ポイントとなります。
デジタルツールによる指導・業務の効率化: クラウド会計やチャットツールなどのデジタルツールを積極的に導入し、業務上の共通言語とします。これにより、若手のスムーズな業務習得と組織全体の効率化を両立させることが可能です。
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【まとめ】繁忙期を乗り切るための採用スケジュールと採用アプローチ
最後に、提示されたスケジュールを念頭に置き、主要な3つの採用アプローチの概要とメリット・デメリットを比較します。
採用活動の開始時期とリミット
未経験者を即戦力化するには、最低3〜4ヶ月の教育期間が必要です。繁忙期に間に合わせるためには、早期の戦略的アプローチが不可欠です。
| 採用したい時期 | 採用活動のリミット | 採用活動の開始推奨時期 |
|---|---|---|
| 年末調整に間に合わせたい (12月上旬) |
8月上旬入社 | 5月(応募・選考開始) |
| 確定申告に間に合わせたい (2月上旬) |
10月上旬入社 | 7月(応募・選考開始) |
【比較表】会計事務所がとるべき3つの採用アプローチ
上記のスケジュールに合わせて採用を進めるにあたり、主要な3つの採用アプローチについて、その概要とメリット・デメリットを比較します。
採用予算、スケジュール、目的を含めて自社に一番合う手法を是非ご検討ください。
| 採用アプローチ | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 求人媒体 | 採用したい人物像や事務所の魅力を自ら作成し、求人サイトに掲載する手法。 | コストが比較的安価に抑えられる。 未経験者や潜在層など幅広い層にアプローチ可能。 事務所の独自の魅力や教育体制を自由に発信しやすい。 |
掲載期間が終了すると母集団形成が止まる。 原稿作成、応募者対応、ミスマッチ発生などから工数が多くかかる。 求める専門知識を持つ人材に絞り込みにくい。 |
| 人材紹介 | 会計事務所の求める経験・スキルを持つ人材を、専門のエージェントが紹介する手法。 | 採用工数が大幅に削減できる(スクリーニングを代行)。 即戦力となる経験者や資格保有者に効率的にアプローチできる。 採用が成功するまで費用が発生しない(成功報酬型が多い)。 |
初期費用は一般的に0円だが、理論年収の35~40%の採用成功報酬手数料が発生するため、複数名採用時の総予算管理が必要。 |
| ダイレクトリクルーティング | 企業(会計事務所)が採用ターゲットを自ら見つけ、スカウトメールを通じて直接アプローチする手法。 | 若手やポテンシャル層など、能動的に動いていない潜在層へアプローチできる。 事務所の育成体制やキャリアパスを個別に熱意をもって伝えられる。 採用単価を抑えられる可能性がある(採用成功時の手数料がない)。 |
採用工数がかかることがある(ターゲット選定、スカウトメール作成)。 返信率が低い場合があり、ノウハウが必要となる。 未経験者へのアプローチは、教育体制を具体的に示さないと響きにくい。 |
万が一の急な欠員はあり得るものの、基本的には繁忙期前に準備を開始し、採用日程にゆとりを持たせることが肝要です。自社に適した手法で採用活動を進めていくことが大切になります。
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この記事を監修したリクルーティングアドバイザー
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橋本 亜以子
大学卒業後、美容化粧品メーカーに入社。営業の他、一部採用・研修等の人事業務を担う機会があり、人材業界に興味を持つように。MS-Japanに入社後はリクルーティングアドバイザーとして、法人営業に従事。主に関西圏の監査法人、会計事務所、コンサルティングファームを中心に「影響力のある営業」を目指して採用支援を行っている。