メーカー(製造業)の経理の特徴は?求められる原価計算のスキルや他業界との違いを解説!



メーカー(製造業)の経理への転職を考える場合、多くの企業で用いられる商業簿記のスキルに加えて、工業簿記・原価計算に関するスキルも習得する必要があります。
一般的に、メーカーは自社で商品を製造・販売するため、原材料の購入はもちろん、まだ完成していない製品(仕掛品)や、そのまま販売可能な中間製品(半製品)などの処理に関する知識が求められます。
この記事では、メーカー経理の特徴や必要な知識について、他業界との違いに触れつつ解説します。
メーカー(製造業)とは
製造業に属する企業は、一般的にメーカーと呼ばれることが多く、主に「モノ」をつくる企業のことを指します。
また、食品・アパレル・自動車・鉄鋼・精密機械など、製造するものによって複数の分野に分類されます。
長らく日本を支えてきたのは「モノづくり」の技術であることは疑いなく、IT技術が世界を席巻する現代においても、製造業は日本のGDP(国内総生産)の2割を占める基幹産業となっています。
一方、製造業はIoTやAI、デジタル化の波に適応できるかどうかの変革期にあり、多くの企業がイノベーション・人材の多様化といった課題の解決に向けて取り組みを進めています。
メーカー経理の特徴は「原価計算」
冒頭で述べたように、メーカーは自社で商品を製造・販売する企業です。
社内の製品や材料、製造過程にある仕掛品などの価値やコストを数値化するため、メーカーの経理職には原価計算の知識が求められます。
ここでは、メーカー経理の特徴である「原価計算」について、基本的な考え方や必要性を解説します。
原価計算とは
原価計算とは、製品の製造にかかるコストを算出することを指します。
「原価」と聞くと、多くの人は材料費や人件費をイメージするかもしれませんが、実際には工場までの材料運搬費や事業活動に伴う販売管理費、工場の地代家賃、水道光熱費など、多くのコストが含まれます。
正確な原価を把握することは、適正な販売価格の設定や経営計画の策定に役立つため、メーカーの経理職には正確な原価計算を行うことが求められます。
メーカー経理に「原価計算」が必須な理由
製造業以外の業界でも、商品を仕入れる際には原価を考慮する必要があります。
しかし、メーカー経理において特に原価計算が重要とされるのは、他業界に比べてコスト構造が複雑であるためです。
例えば、製造業以外の企業では、基本的に「仕入れたものを売る」というシンプルな取引が中心であり、システムによる自動仕訳も容易です。
一方、メーカーでは材料を仕入れただけでは売上が発生しないため、以下のような流れでコストを計算しなければなりません。
- ①原材料を仕入れる
- ②工場で原材料を加工し、仕掛品・半製品などを生産する
- ③製品が完成し、市場に投入される
さらに、正確なコスト管理には、費用別・部門別・製品別に分類し、所定の手順で原価計算を行う必要があります。
このような手順を経て正確なコスト管理を実施することで、メーカーは競争力・利益を確保しているのです。
メーカー経理の仕事内容
メーカー経理も、基本的に日次・月次・年次のサイクルで業務を遂行する点は変わりません。
この章では、メーカー経理の仕事内容を日次・月次・年次の業務に分けて紹介します。
日次業務
日次業務では、伝票の起票や現金出納業務などを行います。
企業規模によっては、日次業務の範囲であれば、簿記や会計の基礎知識だけで対応できるケースも珍しくありません。
月次業務
月次業務では、売掛金・買掛金の管理、給与計算、月次決算および関連資料の作成などがあります。
原価計算も月次業務に含まれ、各業務には締切日が設定されています。
基本的にはルーティン業務ですが、特にミスが許されない給与計算では、社会保険・所得税・住民税に関する知識が求められます。
企業によっては、給与計算は労務が担当し、経理部は給与振込のみを行うケースもあります。
年次業務
年次業務では、年次決算のほか、税金の申告・納税などを行います。
税金の申告・納税は、事業年度終了日から2ヶ月以内に行う必要があります。
そのため、迅速かつ確実に業務を遂行できるよう、マネージャークラス以上はもちろん、担当者にも一定レベル以上の会計・税務知識が求められます。
メーカー経理に必要な知識・スキル
メーカーの経理職には、基本的な経理知識に加え、幅広いスキルの習得が求められます。
基本的な経理知識
経理や簿記の知識は、どの企業でも共通して求められるスキルであり、これまでの経験がまったく役に立たないことはありません。
特に、経理業務全般の基礎知識を押さえておくことは、新しい業務を学ぶ際の土台となるため、転職前に基礎知識を身につけておくことをおすすめします。
原価計算に関する知識
メーカー経理として働き始めると、やがて原価計算を担当することになります。
転職後すぐに実務を担当しなくても、最低限の知識として原価計算の基本書には目を通しておきましょう。
また、製造業の業界知識や、製品が作られる工程を理解しておくと、帳票作成や仕訳の際に製造コストを把握しやすくなります。
特に、製造プロセスのどこに無駄があるのかを数値で分析できる能力があれば、将来的にマネージャー職を目指す際に役立つでしょう。
PC・ITスキル
製造業の経理では、製造業特有の業務に対応した会計ソフトが導入されていることが多く、製造原価報告書の作成や生産管理、在庫管理機能などが備わっています。
また、会計ソフトは企業ごとに異なるため、複数のソフトを使用した経験がある人材は評価されやすいでしょう。
1つの会計ソフトで年次業務の流れを経験しておけば、他の会計ソフトを使用する際にも適応しやすくなります。
メーカー経理で有効な資格
メーカー経理への転職に向けて、取得しておくと有利な資格は次の2つです。
日商原価計算初級
日商原価計算初級は、日商簿記と同様に日本商工会議所が主催する検定です。
試験では、飲食店や小売業などのサービス業を例にした実践的な計算問題が出題されるほか、本来は日商簿記1級の範囲である「予算実績差異分析」も試験範囲に含まれています。
初級レベルの知識を身につけることで、将来的に日商簿記2級で出題される工業簿記の内容を理解しやすくなります。
そのため、工業簿記の実務経験がない場合は、まず日商原価計算初級の取得を目指すとよいでしょう。
日商簿記2級
日商簿記2級では、商業簿記と工業簿記に関する知識や計算能力が問われます。
工業簿記の分野に関しては、仕訳問題のほか、製造原価報告書の作成問題、各種原価計算の全額計算などが出題されるものと考えられます。
実質的に、メーカー経理に必要な工業簿記のスキルを証明する資格としては、日商簿記2級以上と考えておきましょう。
メーカー経理の年収は高い?
一般的に経理は、売上を直接生み出す部署ではないため、経理の年収は業界や企業全体の水準に影響を受けやすい傾向があります。
このように、業界全体の平均年収が高いほど、経理の年収も相対的に高くなると考えられます。
では、MS Agentで調査した「経理・財務の転職市場レポート2024」を参考に、経理の求人が多い業界の平均年収を比較してみましょう。
管理部門特化型エージェント「MS Agent」が募集している経理・財務の求人では、求人数が多い順に 製造業(メーカー)、IT・通信、サービス、建築・不動産、流通・小売り となっています。以下は、上記業界における管理部門・士業全体の平均年収です。
業界 | 平均年収 |
---|---|
製造業(メーカー) | 593万円 |
IT・通信業 | 531万円 |
サービス業 | 465万円 |
建築・不動産業 | 511万円 |
流通・小売業 | 474万円 |
このように、製造業(メーカー)では、経理の年収も他業界と比べて高い傾向にあると推察されます。
各業界の年収調査に関しては、以下の記事をご確認ください。
メーカー経理の求人事例
管理部門・士業特化型転職エージェント「MS Agent」では、メーカー(製造)業の経理求人を多数取り扱っています。
経理スタッフ/業界世界トップシェアのグローバルメーカー
仕事内容 |
・本社単体決算業務 ・法人税申告業務 ・収支分析 |
必要な経験・能力 |
・製造業界における本決算の経験 ・原価計算のご経験 |
想定年収 |
400万円 ~ 800万円 |
経理/老舗光学部品メーカー
仕事内容 |
・月次決算 ・年次決算・連結決算 ・原価計算 ・管理会計 |
必要な経験・能力 |
・月次決算 ・年次決算・連結決算 ・原価計算 ・管理会計 |
想定年収 |
400万円 ~ 449万円 |
経理/医療検査機器メーカー
仕事内容 |
・日次~年次業務 ・経理システムの問い合わせ対応 ・会計事務所対応 ※会計システムは勘定奉行 |
必要な経験・能力 |
・事業会社の経理実務 ・会計ソフト使用経験 |
想定年収 |
400万円 ~ 450万円 |
まとめ
メーカー経理は、一般企業の経理と異なり「原価計算」を担当するため、メーカー勤務の経験がない経理担当者は、事前に原価計算の方法や用語を学んでおく必要があります。
また、現在の職場でルーティンワークに多くの時間を費やしている場合は、転職後に原価計算の理解を深めるため、簿記・会計の基礎を復習しておくことも重要です。
業界知識や製造プロセスを学んでおくと、原価計算の流れや重要性をより理解しやすくなります。
原価計算を基礎から学ぶ場合は、まず日商原価計算初級に挑戦し、基礎知識を身につけた後に日商簿記2級に取り組むとよいでしょう。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

カナダ州立大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。求人企業側の営業職を経験した後、2014年にキャリアアドバイザーへ異動。
2016年からは横浜支社にて神奈川県内の士業、管理部門全職種を担当し、現在は関東全域の士業、管理部門全職種を担当。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 外資・グローバル企業 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ USCPA ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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