経理のDX・自動化スキルは「使える」だけでは不十分!企業が真に求める「プロジェクト推進力」とは(後編)

この記事は後編です。前編の記事はこちらをご確認ください。
<前編の要約>
経理をはじめとする管理部門においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進む背景や、30代・40代の経理人材に求められる業務改善スキル、そして企業が評価するIT理解・プロジェクト推進力について解説しました。
特に、単なるシステム操作ではなく、課題を見極めて業務全体を再設計できる人材こそが「変革を担う経理」として高く評価されることを紹介しました。
引き続き後編では、こうしたスキルをどのように転職市場で評価される実績として示すか、具体的なアピール方法や面接での伝え方、そして実際の転職成功事例を交えて詳しく解説します。
転職市場での評価ポイント
転職市場において、経理人材が特に評価されるのは、システム導入・変革の企画・ROI算出・部門間調整まで主導した「推進力」であり、「改善提案できる経理」にはメンバークラスと比較し、年収レンジで100〜150万円の差が生じることも珍しくありません。
採用企業は、「変革を起こせるリーダー人材」を求めており、その評価は明確に年収に反映されます。
| 経験レベル | 想定されるクラス | 年収への影響 |
|---|---|---|
| RPAツールの操作経験がある | メンバークラスに留まる | 市場価値の上昇は限定的 |
| 企画・ROI算出・部門間調整まで主導 | リーダー・マネージャークラス | メンバークラスと比較し 100〜150万円程度高い評価 |
この差は、指示通りに動かすだけの「RPAオペレーター経験」と、「RPA導入の企画・費用対効果(ROI)計算、部門間調整まで主導し、具体的な成果を示せるプロジェクトリーダー経験」との、決定的な違いです。
転職市場で企業が求めているのは、業務上の非効率や課題を自ら発見し、「システムや新しい手法を用いて、それをどう解決するか」を具体的に提案・実行し、組織を動かせる課題解決能力を持った人材です。
このような実績を持つ人材は、企業の未来の成長を担う重要なポジション、例えば経理マネージャーや企画部門の要職に就く可能性が高く、その結果として市場価値が高く評価されるのです。
アピール方法
「技術論に偏ったアピール」は評価を下げます。職務経歴書では具体的な数値実績を明記し、面接ではビジネス課題の解決ストーリーを語ることで、あなたの推進力を最大限にアピールできます。
職務経歴書で実績を示す
職務経歴書は、あなたの「実行力」を示すための重要なツールです。
「RPA導入により月次決算処理工数を〇〇時間削減」といった定量情報に加え、その削減が企業にどのようなビジネスメリットをもたらしたかまで言及することで、評価は格段に高まります。
■例
「決算早期化を3日短縮し、短縮分を経営会議資料の分析・作成時間に充当。経営層の意思決定の迅速化に貢献」
面接で「推進力」を語る
面接では、技術的なプロセスよりも、ビジネス課題の解決に焦点を当ててください。
面接官は、「使った技術」ではなく、「その技術で、会社のどんなビジネス課題を解決し、どんなインパクトを生んだか」を知りたいのです。
特に他部門を巻き込んだ推進力を伝える際には、STAR方式を用いて、「課題発見→解決プロセス」をストーリーで語りましょう。
S(Situation/状況):プロジェクトの背景と、直面していた課題
T(Task/課題):あなたが担った役割と目標
A(Action/行動):課題解決のためにあなたが主体的に取った具体的な行動
R(Result/結果):達成された具体的な成果と、会社にもたらしたインパクト
「導入にあたり、他部門との調整でどのような苦労があり、それをどう乗り越えたのか」といった一連の流れを論理的かつ情熱的に説明することで、あなたの「思考力」「推進力」「コミュニケーション能力」が立体的に伝わります。
特に、調整役としての「苦労」を、単なる愚痴ではなく『結果に繋がるリーダーシップ』として昇華させて話すことが重要です。
成功事例
業務改善やシステム導入の経験は、キャリアアップの大きな武器となります。
ここでは、具体的な成功事例を二つ紹介します。
成功事例1:システム導入プロジェクト経験→大手企業への転職
ある30代後半の経理担当者は、前職でクラウド型ERPの導入プロジェクトに実質的な責任者として携わりました。
彼は、ベンダー選定から、経理部門だけでなく営業部門や生産部門とのデータ連携まで調整し、業務フロー全体を再構築しました。
この「部門横断的なプロジェクト推進力」と「ITへの深い理解」、そして企画・ROI算出を主導した経験が評価され、より大規模で複雑な組織を持つ大手上場企業の経理部門へ、即戦力となるマネージャー候補として転職を成功させました。
給与水準もメンバークラスより大幅に高い評価を得ています。
成功事例2:システム導入プロジェクト経験→IPO準備企業の経理マネージャーに転職
別の40代前半の経理課長は、前職でSaaS型経費精算システムと連携するRPA導入を主導し、経費処理プロセスを大幅に効率化しました。
特に、ガバナンス強化の視点から承認フローを見直し、ゼロベースで業務基盤を設計した経験が評価されました。
その実績が決め手となり、IPO(株式上場)準備中のベンチャー企業へ、経理マネージャーとして転職。
上場準備においては、内部統制の構築と効率的な会計システム基盤の整備が急務であり、彼の「システム化による業務標準化・効率化」の経験はまさに企業が求めているものでした。
彼は、上場を見据えた経理組織の立ち上げという重要なミッションを任されています。
まとめ|改善力は経理キャリアの差別化要素
自動化を推進できる「改善力」を持った経理人材は、企業の規模や業種を問わずどの企業からも強く求められており、このスキルこそが経理キャリアにおける最も強力な差別化要素となります。
現代の経理部門は、単に過去の取引を記録・集計する役割から、経営の意思決定を支えるための戦略的な情報を提供する役割へと変化しています。
この変化の中心にあるのがDXであり、それを実現するのが業務改善・自動化をリードできる経理人材です。
システム導入の「企画・実行」という具体的な経験は、あなたの市場価値を飛躍的に高めます。
もしあなたが30代・40代で、マネジメント層へのキャリアアップを目指しているにもかかわらず、まだ大規模なシステム導入の経験がない場合は、日々の業務の中で、特定の業務について、まずは「業務の棚卸しと可視化(工数計測やマニュアル化)」から着手することをお勧めします。
現状の業務を定量的に把握し、課題を発見するこの行動自体が、「改善の視点」を持っている証拠になります。
既存の経験に甘んじることなく、積極的に新しい技術を学び、それを具体的な業務改善に繋げた実績を積み上げることが、キャリアを切り開くための鍵となります。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、大手受験業界にて校舎運営・高校生の進路指導に従事。その後、補助金や財務のコンサルタント会社を経て、MS-Japanに入社。
現在はキャリアアドバイザーとして、経理・財務・会計事務所を中心に担当し、様々な方の転職活動を支援しています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 税理士科目合格 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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