固定資産・減価償却のスペシャリストはなぜ需要が高いのか?(後編)

この記事は後編です。前編の記事はこちらをご確認ください。
前編では、固定資産管理の重要性がM&A後の統合や減価償却・減損など会計処理の高度化によって一段と高まっている点を概観し、誤処理が招く財務・統制上のリスクと、その抑止における経理の役割を整理しました。
あわせて、上場企業で評価される会計知識(減損・リース等)やERPを軸にした「キーユーザー」としての橋渡し機能、30〜40代に求められるガバナンス対応・体制構築の要諦を解説しました。
後編では、固定資産管理が転職市場で高く評価される理由を起点に、年収レンジや需要の高い業界、職務経歴書・面接での効果的なアピール方法、そしてキャリアアップにつながる実例を解説します。
転職市場で評価される理由
固定資産管理の経験者は、専門性が高く、かつすぐに業務を任せられる「即戦力」として転職市場で非常に希少性が高いためです。
特に、その経験が「制度会計(減損・リース)」や「システム活用」と結びつくと、年収アップにも繋がります。
固定資産管理は、日常的な会計処理の中でも、特に専門的な知識と実務の勘所が求められる領域であり、経験を積まなければ身につかないため、即戦力となる中途採用が優先されます。
固定資産管理経験者の想定年収レンジ(目安)
| 経験年数/責任範囲 | 上場大手企業 (固定資産管理責任者クラス) |
非上場・中堅企業 (固定資産管理含む担当者) |
|---|---|---|
| 約5年(担当者クラス) | 約550万円 ~ 750万円程度 | 約450万円 ~ 650万円程度 |
| 約10年+マネジメント (複数拠点管理など) |
約900万円 ~ 1,200万円程度 | 約700万円 ~ 900万円程度 |
この差が出る最大の要因は、単に取得・償却・除却を行うだけでなく、公正価値の評価、減損判断、システム導入または改善プロジェクトの経験といった、制度会計やITとの連携経験があるかどうかです。
これらの特殊スキルが加わることで、年収レンジの上限は大きく引き上げられます。
固定資産管理経験者の需要が特に高い業界
製造業・建設業・インフラ企業といった伝統的な業界に加え、近年、固定資産管理の専門家を強く求めている業界を紹介します。
1. 再生可能エネルギー業界
発電設備などの大型固定資産を多数保有し、ESG対応が企業価値に直結するため需要が高まっています。
2. 物流・倉庫業界
倉庫設備や輸送車両の増減が激しく、M&Aも活発なため、リース会計や償却資産税申告の専門知識が常に求められます。
3. 情報通信・データセンター事業
サーバー機器など大規模な設備を保有。技術進化が速く資産の入れ替え頻度が高いため、減損処理やリース会計の理解が重要視されます。
アピール方法
職務経歴書では具体的な「規模」と「実績」を、面接では「問題解決能力」を明確に示すことで、即戦力としての価値を最大限にアピールできます。
システム化が進む現代の経理において、アピールすべきは、自動化された機能ではカバーできない領域への対応力です。
1. 職務経歴書で示すべき具体性
「固定資産〇〇億円規模の台帳管理を担当」と書く際に、「具体的な資産の種類」(例:機械装置・生産設備、ソフトウェア・無形資産、リース資産など)を強調することで、専門性を具体的に示せます。
さらに、具体例として「製造設備50台の耐用年数管理、修繕費の予算策定を担当し、経費削減に貢献」のように、「行動」と「成果」をセットで書くことで、単なるオペレーション経験ではない付加価値の高い問題解決の実績として評価されます。
2. 面接で説得力を高める「改善実績」
面接で「誤処理を防ぐための改善策」を語る際、面接官が最も関心を持つのは、業務フローの見直しやシステムの活用による具体的な改善です。
業務フローの見直し・標準化
「固定資産登録時に2人の承認ステップを導入し、入力ミスを30%削減」など、属人化を排除した実績。
システム連携・RPA活用
「手入力による転記ミスをRPA化し、誤登録件数をゼロに」など、自動化による本質的なミス削減の実績。
現物管理の強化
「バーコード管理導入で棚卸誤差を90%減少」など、実在性担保への取り組み。
3. 「+α」のスキルで差別化
国際会計基準(IFRS)などのグローバルな会計知識や、税務戦略を考慮した最適な減価償却方法の選択に携わった経験は、高度な専門性を示す強力な武器となります。
特に「減損会計適用時における評価プロセスを構築した」といった、判断・分析・構築の経験は、高評価に直結します。
成功事例
固定資産管理の経験は、業界・職種の垣根を超えたキャリアアップや、専門性の深化を伴うキャリアチェンジを実現する強力な実績となります。
固定資産の知識と経験は、その専門性の高さから、異業種への転職や、より専門性の高いポジションへのキャリアチェンジに直結します。
事例1:製造業で固定資産管理を経験 → 大手インフラ企業に転職
【概要】
30代後半・製造業経理。工場設備の固定資産管理を約10年間担当。
【成功の鍵:未経験分野へのロジカルな対応】
面接で、インフラ企業特有の「規制会計(総括原価方式など)」や「長期修繕計画」が問われましたが、候補者は事前学習で基礎知識を習得。
自身の製造業での「長期的な設備維持とコスト管理の経験」をロジカルに転用し、「製造業の設備メンテナンス計画で将来の修繕費用を予測し、資金計画に反映させてきた経験がある」と具体例で裏付けました。
この論理的な理解力と経験の転用能力が評価の決め手となり、内定を獲得しました。これは、固定資産の知見が異業種でも通用する、高い「専門性と企画力」を示す好例です。
事例2:属人的な減価償却処理の改善経験 → 会計システム導入担当に抜擢
【概要】
40代前半・上場企業経理。手作業による減価償却計算プロセスの問題点を指摘し、システム化を主導。
【成功の鍵:部門横断的な「橋渡し役」としての能力】
システム導入プロジェクトにおいて、経理の専門知識に加え、部門横断的な連携能力を最大限に発揮しました。
1.情報システム部門との連携
経理の視点から必要な償却ルールやチェックポイントをシステム設計に反映させるなど、実務に即したシステムを実現。
2.経営企画部門との連携
償却資産のデータ整備による資金計画の精度向上を目的に、経営企画と定期的な情報共有を実施し、経営判断に役立つレポート作成に貢献。
この業務改善と部門間調整の経験が評価され、全社的な会計システム刷新プロジェクトの担当責任者として抜擢されました。
まとめ|固定資産スキルは専門性を示す武器
固定資産管理の専門スキルは、30代・40代の経理キャリアにおいて、市場での自身の希少性を高め、高評価を得るための強力な「武器」となります。
企業の財務基盤が複雑化し、M&AやIT化が加速する現代において、固定資産・減価償却の領域は、単なる日常業務ではなく、リスク管理と経営戦略に直結する重要な専門領域です。
特に、企業の中心戦力となる30代・40代の経理担当者で、固定資産管理に強く、さらに会計基準対応やシステム連携の知見を持つ人材は市場で極めて希少です。
このスキルを深く持つことは、単なる経理実務経験者ではなく、「企業の資産を管理し、財務リスクを低減できる専門家」としての地位を確立することを意味します。
あなたの固定資産管理の経験は、その規模と改善実績を明確にし、専門性の高さを最大限にアピールすることで、次のステップへと確実に進むための強力な武器となるでしょう。
MS-Japanは、この専門性を正しく評価し、あなたのキャリアを戦略的に設計するためのサポートを提供します。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、大手出版系企業を経て現職へ入社。
主に大手・新興上場企業を対象とする法人営業職を4年、キャリアアドバイザーとして10年以上に及ぶ。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ コンサルティング ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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