架空人件費を疑われない対策2選!非正規雇用者の多い業種は要対応



マイナンバー導入により、架空人件費の摘発例が増加する?その罰則は。
平成28年に施行されたマイナンバー制度により、企業が税務署や市区町村に提出する税務関係の書類には、従業員のマイナンバーを記載することが義務づけられています。マイナンバーによって会社が誰に対して給与を支払っているのか、社会保険への加入状況などもあわせて把握されるようになったことは、税理士の皆さんならばよくご存知のことかと思います。
しかし、それにより「架空人件費」の摘発を狙った税務調査が急増するのではないかといわれているのはご存知でしょうか。架空人件費とは、架空のアルバイト従業員などを捏造して人件費を計上することで、経費を水増しする脱税の手口の一つであり、アルバイトや日雇いなどの非正規雇用者の入れ替わりが多い業種で使われやすいといわれています。
通常の税務調査で申告漏れを指摘された場合は、修正申告をして加算税を納めますが、架空人件費のような悪質な脱税行為には重加算税が課せられます。修正申告の場合は原則として本来納める税額の35%、無申告の場合は40%、さらに過去5年までさかのぼって行っていた場合はさらに10%が加算され、法定申告期限に対する延滞税(遅延利息)もかかります。この重加算税は行政罰ですが、脱税の規模によっては、いわゆるマルサ(国税局査察部)の強制調査が入り、刑事告発されます。所得税などの脱税では、10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金となり、刑事罰なので代表者には前科がつき、担当した税理士は懲戒処分を受ける可能性があります。
架空人件費の疑いをもたれないための対策
人件費の架空計上を行っていなくても、税務署に疑念をもたれやすい企業は存在します。そうした顧問先をもっている場合はどのように対処すればよいのでしょうか。とにかく、架空人件費を疑われないためには、正規、非正規を問わず、実在した被雇用者に対して給与を支払った証憑(しょうひょう)を残しておくことです。給与支払の証拠として思い浮かぶのは給与明細ですが、「給与明細の控え」は自社内で容易に作成できるため、証憑としては薄弱です。具体的に、架空人件費の疑いをもたれないための対策をいくつかご紹介します。
(1)税務書類へのマイナンバー記載
現在、マイナンバーの記載が漏れても罰則はありませんが、マイナンバーの記載がないことが疑念を抱かれる第一歩であることは間違いありません。なかにはマイナンバーを提示しない(拒否する)被雇用者もいるかもしれませんが、その場合は、会社としてマイナンバー収集の手続きをとったにも関わらず、従業者本人の都合もしくは意向で提示されなかったことを記録に残しておきましょう。
(2)給与の支払を証明する書類
社会保険に加入している従業員は、社会保険加入の手続きや社会保険料の支払が架空の従業員ではないことの証明になります。パートなど社会保険に加入しない場合でも年末調整後に自治体に提出する「給与支払報告書」「履歴書」「源泉徴収簿」があれば、実在を証明できます。
問題になるのは単発アルバイトや日雇いの被雇用者です。履歴書の提出を求めず、現金の手渡しで支払を済ませてしまっている場合は証憑が残りません。マイナンバーと本人確認ができる身分証明(マイナンバーカードで可)、本人が給与を受け取ったことを証明する領収証などの証憑を残すことが必要になります。
クライアントを守り、万が一の不正を見逃さないためにも適正な管理を
思いあたる方もいらっしゃるかもしれませんが、飲食店、小売店、建設関係、制作会社などのアルバイト、日雇いなどの従業員が多い業態では、不正を行っていなくても、架空人件費を疑われやすい状況になっている事業者が存在します。税務調査で架空人件費の疑いをかけられたとき、不正を行っていないことを証明できなければ、重加算税を課せられる可能性もあります。顧問税理士として善意の経営者であるクライアントを守ることはもちろんですが、万が一、クライントが不正を行っていた場合には、クライアントだけではなく、税理士の責任も問われかねません。特に、管理部門を少ない人数で切り盛りしている中小企業では、管理が属人的になりがちで経理担当者の記憶や経験に依存している場合もありますが、人件費に関する部分だけでなく、常に透明性を保ち、第三者からみても適正な管理ができるよう指導していくことが大切です。


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