役員の転職は難しい?制限はある?転職活動と円満退社のポイントなど



役員の転職は難しいと言われるものの、決して不可能ではありません。ただし、役員の転職活動ではいくつか覚えておくべき注意点があります。
本記事では、役員の転職が難しい理由や注意点、転職を成功させるためのポイントなどを解説します。
役員は転職できる
冒頭でもお伝えした通り、「役員の転職は難しい」と言われることが多いですが、実際は役員でも転職は可能です。
役員を務めるほど優秀な人材であれば、雇用したい企業は多くあることでしょう。
実際に転職市場でも「エグゼクティブ転職」や「ハイクラス転職」、「ハイキャリア転職」などと銘打って、役員の転職を促進しているケースも見受けられます。
役員クラスの求人を募集する企業の背景としては、「事業の安定化や拡大」が一般的ですが、ベンチャー企業が「早期に売上アップを図る目的」で、役員クラスの人材を募集することも珍しくありません。
役員の転職は一般的に「難しい」と言われがちですが、実際には決して不可能ではないと言えるでしょう。
なぜ役員の転職は難しい?3つの理由を解説
役員クラスの求人が存在するにもかかわらず、なぜ「役員の転職は難しい」と言われているのでしょうか?
主な理由は、「求人数・採用枠が少ない」「求めるスキル・知識・経験・適性のレベルが高い」「既存社員・役員との関係構築が難しい」の3つです。
ここでは、それぞれの理由について、詳しく解説します。
求人数・採用枠が少ない
会社法で定められている役員のポストは、取締役、会計参与、監査役の3つしかありません。企業によっては任意で専務、常務、執行役員を置いているところもありますが、ポストそのものが限られており、求人数や採用枠も少ない傾向です。
また、役員の求人は一般的な転職サイトでは公開されないケースも少なくありません。役員は企業運営の重要なポジションを担うため、表立って募集してしまうと従業員や取引先に不安を与える恐れがあります。
そのため、ヘッドハンティングや転職エージェントの非公開求人を利用して採用活動を行うことが一般的です。
求めるスキル・知識・経験・適性のレベルが高い
高度なマネジメントスキルや特定分野の専門知識、経営スキルなどが求められることも、「役員の転職は難しい」と言われる理由の一つです。
役員は企業の経営と管理を担っており、組織の行く末を決定づける権限も有しています。
そのため、役員の採用活動では、企業運営に必要となる高度な知識や十分な経験があるか、役員としての適性を有しているかなど、一般社員以上に厳しく見られます。
既存社員・役員との関係構築が難しい
外部から新たな役員を迎えるとなると、既存の従業員は「自分たちの業務が大きく変化するのでは」と不安を抱くでしょう。また、外部の者がいきなり組織の中枢へ入りこむことに、危機感や嫌悪感を抱く人も少なくないと考えられます。
さらに、出世競争を勝ち抜いて役員に登り詰めた叩きあげの役員など、キャリアの異なる他役員と良好な関係を構築することも簡単なことではないでしょう。
役員の転職理由とは
経営者が描く経営戦略や方針と、自身の目指す方向のズレが転職理由になることは珍しくありません。例えば何らかの理由で企業の経営方針が大きく変更されたことで、取締役会の本来の機能が損なわれたり、役割や報酬が変わってしまったりすることも考えられます。
そのような場合は、このまま役員として企業に残り続けても目標が持てない、あるいは昇進や昇給が見込めないと考え、転職を決意するようなケースです。
人間関係の悪化やストレスなども、よくある役員の転職理由です。派閥争いなどで人間関係が悪化した結果、ストレス過多で疲弊してしまうこともあるでしょう。
また、企業の行く末を左右する重要な意思決定の責任を担うため、プレッシャーの連続から転職を考える人もいます。
役員の転職に制限はある?トラブル防止の注意点とは
企業の中枢を担う役員の転職では、「役員の転職を規制する法律はあるのか?」「トラブルを避けて転職するにはどうしたらよいか?」と不安に思う人も多いでしょう。
ここでは役員の転職について、トラブル防止の注意点を解説します。
役員の転職を制限する法律はない
役員の転職を制限する法律はありません。
会社法356条では、「競業及び利益相反取引の制限」が設けられているものの、適用されるのは役員在任期間のみです。
役員であっても職業選択の自由は保証されているため、自分の意思に従って転職できます。
競業避止義務の有無を確認しよう
入退職時もしくは役員就任時に交わす契約内容によっては、転職に「競業避止義務」の規制がかかる場合があります。転職の際にトラブルとならないために、重要な確認事項です。
競業避止義務とは、退職後に一定期間は同業他社への所属や、同業を行う企業の設立などを禁止する取り決めです。違反すれば損害賠償を請求などのリスクが発生します。
また、実際に転職をしなくても、役員の任期中に転職活動を行っただけで問題視されるケースも珍しくありません。
転職活動をする前に、契約内容や就業規則、社内規定などをしっかり確認しましょう。
役員が前職を円満退社するためのポイント
役員は任せられている業務の責任が重く、一挙手一投足が企業に大きな影響を与えます。そのため、転職に伴う退職時には、円満に企業を離れることが必要不可欠です。
また、社員の引き抜きや前職の情報漏洩など、明らかな敵対行為も行ってはなりません。
対応を誤るとトラブルになるだけでなく、訴訟問題に発展して賠償金を請求されたり、転職活動に悪影響を与えたりする場合があります。
ここでは、役員が円満退社するためのポイントとして下記の3つをご紹介します。
・任期満了のタイミングで退職する
・転職活動中に職務を疎かにしない
・同業他社へ転職する場合には配慮する
任期満了のタイミングで退職する
先述した通り、役員には任期があります。一般的には、取締役が2年、監査役が4年で、非公開企業の場合は最長10年まで延長可能です。
役員は株主総会決議を経て決定されるため、株主の意向も大きく反映されています。
そのため、任期途中に役員の職を退くことは、まず歓迎されないと言えるでしょう。
退職の申し出を受けた後、企業は急いで後任を探す必要がありますが、役員となり得る人材は非常に貴重であり、誰もが職に就けるわけではありません。仮に退職が認められたとしても、後任が決まるまでは引き止められる可能性があるでしょう。
任期途中に無理やり退職すると、訴訟などのリスクが伴います。職業選択の自由などを盾に、離職を強行することは決しておすすめしません。
また、応募先の採用担当者も履歴書や職務経歴書から任期途中で退職したことが分かります。「なぜ任期途中で辞めたのだろう?」と不審に思われてしまう場合もあるでしょう。
転職活動を円滑に進めるためにも、任期満了での転職がベターです。どうしても任期途中での退職になる場合は、双方の了承を得ることを徹底しましょう。
>転職活動中に職務を疎かにしない
当然のことですが、転職活動中であっても任期期間であれば、職務をしっかりと果たすことが重要です。
「どうせ転職するから」と現職の業務を疎かにしてしまっては、企業に不信感を与えるうえに、従業員への示しもつきません。
業務を疎かにしてしまうと、「転職後に前職の情報を漏洩するのではないか」「規定違反になる競業への転職を黙っているのではないか?」など、あらぬ疑いをかけられてしまうこともあるでしょう。
自分が退職しても、企業がうまく運営できるように環境や仕組みを整備することが、退職する役員の努めです。
>同業他社へ転職する場合はとくに注意が必要
これまでの経験や磨いてきたスキルを活かすために、同業他社への転職を選ぶことは、一般的な手段だと言えるでしょう。
しかし、役員が同業他社へ転職する場合は、細心の注意を払う必要があります。
役員は、一般社員の知らない情報や、他社に漏洩すると企業利益に影響を与える情報を把握しているため、役員が同業他社へ転職することをよく思わない企業が多い傾向です。
転職先が同業他社になる場合は、転職先の公表を後ろ倒しにできると良いでしょう。
役員報酬の相場は?
役員報酬は、転職先の企業規模や事業内容、フェーズなどによってさまざまです。
大企業や外資系企業であれば、数千万から1億円を超える年収を得ることも不可能ではありません。
しかし、新たな事業にチャレンジしている若い企業の場合、役員でも一般の従業員と同等の年収になる可能性もあります。
また、前職と同じポストを与えられたとしても、同等の報酬であるとは限りません。ただし、入社当初は役員報酬が低くても、企業成長や自身の成果によって報酬が上昇していく可能性は十分あります。
転職において報酬は重要であるものの、あまり固執せず、それ以外の要素も加味して検討することが大切です。
役員採用で企業が重視するポイントとは?
役員は企業の意思決定をする重要な役割を担うため、企業は慎重に採用を進めます。
「なぜ役員の転職は難しい?3つの理由を解説」でも解説した通り、役員の転職では、高度な専門知識と豊富な経験が必要です。
しかし、例え専門知識を持つ経験豊富な人材であったとしても、企業のビジョン・社風に合わないと判断されれば採用されません。
書類選考や面接をスムーズに通過したものの、最後の役員面接で不採用となるケースの大半は、このようなマッチングの不足だと考えられます。
応募先の選定では、「自身の経験・スキルが活かせるか」や「条件が合うか」の視点も重要ですが、「経営理念に共感できるか」、「社風・社内文化とマッチするか」も考慮する必要があります。
役員の転職活動は転職エージェントに相談しよう
役員の転職を成功させるには、転職エージェントの利用がおすすめです。転職支援のプロから直接アドバイスを受けられるため、成功率が格段に高まります。
第三者目線の市場価値を把握できる
転職を成功させるには、自身の市場価値を客観的に把握することが重要です。市場価値の把握には自己分析が有効ですが、思い込みなど主観が入りこむケースも少なくありません。
転職エージェントでは、転職支援のプロであるキャリアアドバイザーによるキャリアカウンセリングを受けることができます。
最新の転職市場動向を踏まえた第三者の視点から市場価値を診断してもらうこと、今後のキャリアプランを明確化できるでしょう。
一般公開されていない求人を紹介してもらえる
転職エージェントでは、一般公開している求人とは別に、限定の非公開求人も扱っています。
非公開求人とは、企業側と転職希望者側の求める条件を双方満たした場合にのみ紹介される求人です。求人の公開範囲を制限できるため、応募差が殺到しやすい人気職種や、企業経営に携わる重要なポジションの採用活動で使用されます。
転職エージェントには、様々な職種を幅広く取り扱う総合型と、特定の分野の求人を専門的に取り扱う特化型があります。役員の転職の場合はハイクラス転職に特化した転職エージェントがおすすめです。
応募書類添削・面接対策サービスがある
転職エージェントでは、選考を有利に進めるために履歴書・職務経歴書の書き方を指導しています。キャリアの棚卸から応募先に合わせたアレンジまでトータルサポートサポートが可能です。
また、書類選考通過後の面接についても、対策を行っています。
転職支援実績のある企業であれば、過去の選考でよく聞かれる質問や面接官の人柄なども詳しく把握しています。
内定後の条件交渉も依頼できる
転職エージェントを経由して内定すると、就労に関する条件や待遇などの交渉を代行してもらうことができます。
給与や休暇など、直接自分の口からは伝えにくい希望も代理で伝えてらもらえるため、精神的な負担を少なくすることができるでしょう。
不慣れな人が自ら交渉を行うと、失敗してしまう可能性があります。一方、転職のプロである転職エージェントであれば、条件や待遇の交渉にも慣れているためスムーズに話を進められ、理想的な条件で入社できる確率が高まります。
「MS Agent」の役員求人例
ここでは、弊社MS-Japanが運営する管理部門・士業特化型転職エージェント「MS Agent」で取り扱う役員求人の一例をご紹介します。
プラットフォームビジネスで成長中のITベンチャーのCFO候補
仕事内容 |
・事業計画の策定・予実管理 ・財務戦略・エクイティストーリーの策定 ・資金調達(海外含む) ・IPO準備における業務統括 ・ステークホルダーマネジメント など |
必要な経験・能力 |
<必須>※下記いずれか ・スタートアップ企業や成長段階の企業での5年以上の財務戦略の経験 ・外部資金調達や投資家との交渉経験・成功実績 ・CEOや経営陣と緊密に連携し、ビジネス戦略・立案・実行支援経験 ・財会計、税務、予算編成などの財務管理に関する深い専門知識・経験 ・チームの指導や発展を促進し、高レベルのリーダーシップスキル |
想定年収 |
1,000万円 ~ 1,500万円 |
グロース上場急成長中企業の法務部長(CLO候補) 社内弁護士複数名在籍
仕事内容 |
・法務組織の拡大及びマネジメント ・社内ガバナンスの整備強化、運用推進 ・事業の法的リスク分析 など |
必要な経験・能力 |
<必須> ・法務部長・課長相当ポジションとして、部下複数名のマネジメント経験7年以上 ・法的コンプライアンス管理・強化、社内規程の整備、法改正への対応経験 |
想定年収 |
900万円 ~ 1,500万円 |
日本を代表する化学メーカーの役員人事・HRガバナンス(マネージャー候補)
仕事内容 |
・指名委員会・報酬委員会の運営(事務局業務) ・役員人事関連の業務 ・株式報酬関連の事務運営 |
必要な経験・能力 |
<必須>※下記いずれか ・人事業務(人材開発、等級・評価・報酬制度設計等、人事企画)経験者 ・商事法務ないしは経営管理等経験者(法的志向やコーポレートガバナンスへの理解) |
想定年収 |
701万円 ~ 940万円 |
まとめ
役員の転職は、そもそも公開されている求人数が少ない、求められるスキルや適性のレベルが高いなどの理由から、転職は難しいと言われています。
また、転職に法的な制限はないものの、競業避止義務や任期途中の退任などには注意する必要があります。
転職エージェントを活用すれば、自身の市場価値の正確な把握や非公開求人の情報収集、履歴書・職務経歴書のブラッシュアップなどができ、より理想的な転職活動が可能です。自力での転職が難しいと感じている場合は、ぜひ「MS Agent」にご相談ください。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、ウェディングプランナー、業界大手で求人広告の企画提案営業を経て、MS-Japanへ入社。
企業担当のリクルーティングアドバイザーを経験した後、現在は転職を考えられている方のキャリアアドバイザーとして、若手ポテンシャル層~シニアベテラン層まで多くの方の転職活動のサポートをしています。
人材業界での経験も長くなり、いつまでも誰かの記憶に残る仕事をしていたいと思っています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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