希望退職・早期退職とは?希望退職者・早期退職者は転職することは可能?



2024年に入ってから、希望退職・早期退職募集の発表が世間を騒がせています。
東芝、資生堂、ソニーなどの誰でも名前を聞いたことがある超大手企業でも希望退職者もしくは早期退職者を募集しており、東京商工リサーチによれば、2024年4月23日時点で、「早期・希望退職者」の募集が判明した国内の上場企業は21社にも達します。
国内の対象人数は3724人と前年同期比3倍以上で、すでに2023年の年間の募集人数(3161人)を上回っている状況です。
この記事では、今話題の希望退職・早期退職とについて説明し、また、希望退職・早期退職した人材は転職が可能なのかについても解説します。
希望退職とは?
希望退職制度は、特定の期間に退職希望者を募る制度であり、従業員の意思を尊重し、自主的な選択を促す制度のことです。
企業が一方的に従業員を解雇することは労働者保護の観点から厳しく制限されており、法的な拘束力はなく、企業が強制的に従業員を解雇するような制度ではありません。
尚、従業員が希望退職を申請しても必ずしも退職が確定するわけではなく、場合によっては企業からの引き留めがあることもあります。
なぜ希望退職が募集されるのか?
希望退職制度を利用する企業において、多くの場合「人員を削減し、コスト構造を再構築(リストラクチャリング)する」ことを目的としています。
本来であれば、アメリカのようにパフォーマンスの悪い従業員を解雇(レイオフ)して人員整理を行う方が、会社の立て直しという意味では効果的ですが、日本では従業員を解雇するためにはいくつかの条件をクリアしている必要があり、特に「解雇回避努力義務の履行」という条件をクリアすることが難しいです。
解雇回避努力義務が履行されているか否かは、従業員を解雇しないために、役員報酬のカット、出向や配置転換、一時帰休の実施など、企業があらゆる努力をしたうえで、それでも解雇せざるを得ない状況なのかどうかという点がポイントになります。
この「解雇回避努力義務の履行」の最初の取り組みとして、希望退職者を募集する企業が多いのです。
希望退職した場合のメリットは?
上述の通り、企業側としては人件費を削減することができるため、コスト構造の改善というメリットがあります。
それでは、希望退職をする従業員側にはメリットはあるのでしょうか?
希望退職に応募する主なメリットとして、以下が挙げられます。
退職金を多く受け取れる
希望対象に応募した人には、退職金を割り増す優遇制度が取られることが一般的ですので、まとまったお金と時間を手にして、次のキャリアについてゆっくりと考えたり、旅行に行ってリフレッシュするなど、働きながらではなかなかできなかったお金と時間の使い方ができます。
2024年2月29日に1,500人の希望退職者を募ったことで話題になった資生堂ジャパンでは、1,477人の応募があり、退職金への特別加算金などの費用約180億円を2024年1~3月期に非経常項目として計上しました。
これだけ大きな金額が動いていることからもわかる通り、希望退職時の退職金は通常もらえる退職金よりも高額であることが期待できます。
失業保険の給付を受けられる
希望退職は「会社都合」での退職となるため、雇用保険の失業保険の給付を受ける場合、待機期間7日の後すぐに受給することができます。
「自己都合」の場合に比べて2ヶ月ほど早く支給され、受給期間も「自己都合」の退職より最長で2倍以上の期間受給することができます。
※受給期間は年齢や勤務年数の条件によっても異なります。
上記のような従業員側のメリットもあるため、希望退職をキャリアの転機と捉え、前向きに退職を希望する人にとってはありがたい制度とも言えます。
早期退職と希望退職の違いは?
希望退職と似た言葉で「早期退職」というフレーズを聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
早期退職とは主に2つの意味があり、1つは制度としての早期退職を指します。もう1つは、入社から数か月などの短い期間で退職することを指す、慣用句としての早期退職です。
今回は希望退職制度と比較することを目的とするため、慣用句としての早期退職には言及せず、制度としての早期退職について解説します。
制度としての「早期退職」
早期退職制度も、企業側から従業員を指名して退職させるのではなく、早期退職者を企業が募集し、それに応募した従業員が対象となります。
また、早期退職制度の場合も、受け取れる退職金の金額が割り増されることが一般的です。
割り増しの金額や計算方法は企業によって様々で、「一律●円」と定める場合もあれば、「月収●カ月分」「勤続年数×●円」とする場合もあります。
それでは、早期退職制度と希望退職制度の違いについて見てみましょう。
時期
希望退職制度は会社の業績不振など、何かしらの経営課題が発生した際に利用されるケースが一般的なため、募集時期が定期的に決まっているわけではありません。
一方で、早期退職制度の場合は、会社の福利厚生の一環と位置づけられることが多く、「恒常的」に利用されています。
早期退職希望者を募集する時期は企業によって異なりますが、12月の年末前に募集を開始する企業が多い傾向です。
日系企業の多くは3月で年度末を迎え、4月から新年度に切り替わるため、12月末に募集を開始し、そこから退職に必要な手続きや業務の引継ぎ、有休消化等を行い、3月いっぱいで退職という流れが最もスムーズだからです。
対象・応募条件
希望退職制度の場合、その企業がどの部門やグループ会社・子会社に課題を抱えているかがポイントとなるため、応募条件や募集人数は様々です。
全社員から広く希望者を募る場合もあれば、特定の部門からのみ希望退職を募るケースもあります。
対象職員の年齢も企業ごとに異なりますが、コスト構造の見直しという観点から、若手職員よりも45歳以上等の一定の年齢、勤続年数である職員を募集対象とするケースが多いです。
早期退職の場合は、応募条件として年齢を設定することが多いです。
「50歳以上の職員」等の年齢条件を付け、ある程度年次の高い職員から早期退職希望者を募ることが一般的です。
目的
希望退職制度の目的は、上述の通り会社の業績不振などによるコスト構造の見直しであり、現在の課題(人件費の削減等)解決を目的として、対処療法的に行われることが一般的です。
一方で、早期退職制度は必ずしも会社の業績が悪く、従業員を解雇する必要がない場合でも利用されることがあります。目的としてはいくつかありますが、「組織の新陳代謝」という点が一番大きいでしょう。
早期退職制度の募集対象となる職員は50歳以上などの年次の高い職員であることが多く、こういった役職者が早期退職制度によって退職することで、部長職などの役職者のポストに空きが出ることが想定されます。
そのポジションに、40代などの中堅社員が昇格することで、組織としての新陳代謝が進み、若手や中堅社員の活躍機会が増えます。早期退職者よりも下の年代の職員にポストを譲って、組織全体を若く、活気ある状態で保つということが一番の目的です。
また、早期退職制度には、従業員のセカンドキャリア支援という側面もあります。
人生100年時代と言われる中、60代、70代でも活躍するビジネスマンは増えており、50代からセカンドキャリアに挑戦する人も少なくありません。
企業によっては早期退職希望者にキャリア支援を行っているケースもあり、早期退職希望者は提携している人材紹介会社のキャリアカウンセリング・転職支援が受けられたり、場合によっては転職活動のために資金援助を受けられるケースもあります。
早期退職制度を取り入れている企業は福利厚生制度の一部として実施していることが一般的なので、自社の福利厚生制度を確認することで、どのような支援が受けられるのか、早期退職制度の詳細が分かるかもしれません。
希望退職者・早期退職者は転職できる?
希望退職・早期退職の対象者は現役で働いている生産年代であるため、この制度を利用する方のほとんどは転職先を探すことになるでしょう。
それでは、希望退職・早期退職者は転職できるのでしょうか?
この章では、MS-Japanが運営している管理部門・士業に特化した転職エージェントサービス「MS Agent」のデータを元に、希望退職・早期退職制度の対象となることが多い40代・50代・60代の方々が転職できるのかどうかについて解説します。
40代の場合
結論からいうと、40代であれば十分に転職が可能です。
昨今、人口減少や高齢化の影響から、企業の人材採用意欲は旺盛で、また、日本においてもJOB型雇用が進んでいるため、即戦力として活躍が期待できる40代の採用ニーズは高いためです。
これまで1社で勤め上げてきた方で、初めての転職活動で不安を感じる方もいるかもしれませんが、40代で初めての転職活動の場合も問題ありません。
実際に、2023年1月~12月にMS-Japanの転職エージェントサービスMS Agentを利用して転職された40代の方々のうち、はじめて転職活動を行った方は全体の6.7%存在しており、40代から新しい職場で再チャレンジを目指す方も一定数存在していることが分かります。
また、希望退職・早期退職で多めに退職金が受け取れるといえど、毎月の収入がなくなってしまうため、転職先が決まらない期間が長くなることも不安かもしれませんが、こちらに関しても、しっかりと準備・対策を行えば大きな問題にはならないでしょう。
上記と同じく40代を対象とした調査で、2023年1月~12月に「MS Agent」に登録し、キャリアアドバイザーと面談した日から転職先を決定するまでの日数の最多は、「31日~60日」の30.8%でした。また、「90日(3ヶ月)以内」に転職先を決めている人が66.9%と全体の3分の2以上を占めていることが分かりました。
尚、上記の調査対象の方々は現職で働きながら転職活動を行っている人がほとんどであり、退職後に転職活動に集中する期間を設けることができる場合は、1,2か月程度で十分に転職が可能でしょう。
50代・60代の場合
近年、50代・60代の転職市場が活性化しています。
50代・60代の人材がMS-Japanを使って転職した実績は、2020年度にコロナウイルスの流行によって一時減少したものの、2016年度から2022年度は2.5倍に増加しています。
要因として考えられることは、まず1つに30代・40代の採用難易度の高まりが挙げられます。
近年、求人数は右肩上がりで増加していますが、転職希望者は横ばいから減少傾向にあり、求人数の多さから特に中途採用のニーズが高い30代・40代の採用難易度が高まっています。
一方で、50代・60代に関しては、比較的競合が少ない傾向があるため、採用に苦戦する企業や早期に組織体制の構築が必要な企業から注目が高まっているのです。
また、事業の成長ステージに合う即戦力重視の採用戦略を採る企業が増えていることも要因です。
成長産業の環境変化は非常に早く、短期的に組織体制を構築する必要性を感じている企業が増えています。
特にIPOを目指す企業では、短期間で経営管理部門の体制を構築して、目標としている上場日に向けて準備を進めたいというニーズがあります。
それに伴い経営戦略、事業戦略に関わるポジションは、入社後の教育にじっくり時間をかけることなく、即戦力である50代・60代のニーズが高まっているのです。
以上の要因から、転職市場は非常に活発になっており、50代・60代の人材も十分に転職が可能であると言えるでしょう。
【関連サービス】
50代以上シニア層の転職支援「エキスパートシニア」
希望退職・早期退職者が転職時に注意するポイントは?
希望退職・早期退職制度は年齢・勤続年数が一定の年数以上の方に適用されるケースが多いため、希望退職・早期退職者の方は40代以降であり、経験者数も1社のみの方が多いでしょう。ここでは、そういった方々が転職時にどのような点に注意すべきかについて解説します。
経験・スキルを相対的に評価する
まず、転職活動で重要になるのが自己分析です。自身の職務経験やスキル、人間性などを相対的に評価し、市場価値を見極めることが重要です。
1社経験のみの場合、他の会社の事情が分からず、自らの経験・スキルがどれぐらいの評価を受けるものなのか自分で判断できない可能性もあるでしょう。
そういった方は、転職エージェントに登録し、キャリアカウンセリングを受けることをおすすめします。カウンセリングで自身の市場価値をしっかりと把握しておくことで、戦略的な転職活動が可能になるでしょう。
希望する条件の優先順位をつける
中途採用の場合は、企業からすれば自社で全く実績のない人材を迎え入れることになるため、必ずしも前職・現職と同じ条件で採用されるとは限りません。
絶対に外せない条件から順に優先順位をつけておき、広い視野で求人情報をチェックすると、幅広い選択肢を持ちながら転職活動をスムーズに進められるでしょう。
なお、優先順位をつける際には下記の項目それぞれにおいて「ここだけは譲れない」といったポイントを書き出していき、書き出したポイント同士を比較して優劣をつける方法がおすすめです。
- どのような経営理念や方針の企業で働きたいか
- どのような事業を展開する企業で働きたいか
- どのような部門でどのような仕事を行いたいか
- どのような雰囲気の企業で働きたいか
- どのような勤務条件を希望するか
- どのくらいの年収を希望するか
応募先を絞り込みすぎない
なかには「この業界がいい」「大規模の企業に転職したい」といった希望を持っている方もいるかもしれませんが、希望する業界や規模に固執せず、幅広い視野で自身のスキルや経験を活かせる職場を探すことがポイントです。
応募先のこだわりが強すぎると、転職活動期間・離職期間が長期化してしまう可能性が高くなるため、まずは幅広く検討し、それらの選択肢のなかで相対比較していくことをおすすめします。
これまでの業務のやり方に固執しすぎない
豊富な実績を持っているからこそ、これまで自分がやってきた手法を用いて新たな職場での活躍を目指そうとする方が多い傾向があります。
しかし、現代は激しい変化に対して柔軟に対応できる力が求められることから、そういった固執しすぎる考え方は面接時に敬遠される恐れがあるため注意が必要です。
まずはご自身の持つスキルや経験が今の時代にも通用するのか、求められているのかを見極めて、転職活動時にアピールするかどうかを決めるとよいでしょう。
また、現代のニーズにはどのような手法がマッチするのかを確認し、ご自身のスキルや経験と組み合わせてオリジナルの手法として提案できるとより魅力的な自己アピールを行えます。
さらに、転職先企業の手法についてもしっかりと下調べをしておき、その手法を積極的に学んで業務に活かしていこうとする前向きな姿勢を見せることも大切です。
まとめ
この記事では、昨今話題になっている希望退職や、似た用語の早期退職について解説しました。
希望退職の募集は晴天の霹靂のように訪れることもあるため、ずっと1社で勤め上げるつもりだった方が、急に転職を余儀なくされてしまう場合もあります。
現在の会社に不満がない方でも、今後の自分のキャリアについては常に考えておくことが大切です。
MS-Japanの転職エージェントサービスMS Agentでは、管理部門・士業事務所で働く方を対象に、無料のキャリアカウンセリングを実施しています。
今すぐに転職を希望していない方であれば、情報交換だけでも大歓迎ですので、一緒にキャリアについて考えてみませんか?


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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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