戦略人事の能力をどう磨くのか?求められるスキルとキャリアパスの実例(後編)

この記事は後編です。前編の記事はこちらをご確認ください。
前編では、戦略人事の定義と注目背景を整理し、オペレーショナル人事との違いを明確化しました。
あわせて、経営課題を人材施策へ落とし込むための「企画力・経営理解」「データ分析」「合意形成」「HRテック活用」といった中核スキルについて概観しました。
後編では、これらのスキルを発揮する具体的な実務シーン(人材ポートフォリオと配置最適化、評価・報酬制度の刷新、後継者育成)と、現職での小さな変革や外部ネットワーク活用によって戦略人事の経験を積む実践アプローチを解説します。
戦略人事スキルを発揮する実務シーン
戦略人事スキルは、組織の未来を決める重要な意思決定に関わる場面で最大限に発揮されます。
特に、人事制度の改定といった合意形成に加えて、経営目線でのドライな判断力も求められるのが現実です。
1. 人材ポートフォリオと配置最適化
全社的な事業戦略を達成するために、「将来、どの事業・部署に、どのようなスキルを持った人材が、何人必要か」を予測し、現在の人材ポートフォリオ(人材構成)とのギャップを分析します。
このギャップを埋めるための採用計画、育成計画、そして配置の最適化を企画・実行するシーンです。
例えば、新規事業立ち上げに合わせて既存部署から必要なスキルを持つ人材をアサインする際、単なる異動ではなく、中長期的なキャリア形成を見据えた配置戦略を提示する必要があります。
2. 評価・報酬制度の企画・刷新
経営目標や新しい組織風土に合わせて、社員の行動や成果を最大化するための評価・報酬制度を一から企画・刷新する実務です。
等級制度、評価項目、インセンティブ設計に至るまで、経営戦略との連動性、現場のモチベーション、法的な公平性を多角的に考慮する必要があります。
この評価制度の刷新時、現場、特に長年の慣習を持つベテラン層からの反発は避けて通れない現実です。
戦略人事には、制度の公平性・論理性を示す努力は当然必要ですが、制度を真に刷新し、組織を変革するためには、時に「ドライな判断力」も求められます。
現場の声に寄り添い過ぎて本質的な変革が損なわれるのを避けるため、組織全体の利益と将来の成長を優先し、明確な方針を貫く強い意思決定が戦略人事に不可欠な資質となります。
3. 後継者育成の計画やハイポテンシャル人材の発掘
企業の持続的成長の要となる次世代リーダーを計画的に育成・確保するための後継者育成の計画(サクセッションプラン)や、高い潜在能力を持つハイポテンシャル人材を特定し、集中的に育成するプログラムを設計・運営するシーンです。
この実務では、単に優秀な社員を選ぶだけでなく、経営層と密に連携し、将来の経営戦略に必要なリーダー像を明確にし、その要件に基づいた評価・選抜プロセスを公正かつ客観的に設計するスキルが求められます。
戦略人事の経験を積む方法
戦略人事の経験を積む最短ルートは、現職における小さな変革プロジェクトへの参画と、外部ネットワークを活用した知見の蓄積の二本柱です。
座学だけでなく、意思決定のプロセスに関わる「実戦経験」を積むことが何よりも重要です。
1. 現職での実践(小規模制度改定・データ分析から着手)
大きな制度改革をいきなり任されることは稀です。まずは、現職で担当できる範囲の「小さな変革」から着手しましょう。
たとえば、評価シートの項目を一つ見直すといった小規模な制度改定のプロジェクトに手を挙げる、または、給与・勤怠などの既存データを使って離職率の傾向分析や、エンゲージメントサーベイ結果と部門成績の相関分析など、データ分析に着手してみるのです。
これにより、「経営課題をデータで裏付け、施策に落とし込む」という戦略人事の思考プロセスを実践的に学べます。
分析結果を経営層や現場の上長に報告し、フィードバックを得ることで、コミュニケーション・折衝力も同時に磨かれます。
2. 外部ネットワーク・プロジェクトでの経験蓄積
自社内だけでは経験できない知見や視点を獲得するために、外部ネットワークの活用は不可欠です。
具体的には、人事系セミナーや異業種交流会への参加、プロボノ(専門スキルを活かしたボランティア)活動や、社外のプロジェクトへの参画などが挙げられます。
特に、他社の戦略人事担当者と交流を持つことで、自社の慣習にとらわれない客観的な視点や、最新のHRテック活用事例、他社が直面している経営課題への対応策などを学ぶことができます。
これは、いざ転職を考える際に、「他社で通用するスキル」を言語化する上でも大きな資産となります。
まとめ
本記事では、CHROというキャリアも見据えた戦略人事の経験を以下に積むのか、求められる具体的なスキル、そしてキャリアパスの実例について解説しました。
戦略人事に求められる核となるスキルは、経営戦略を深く理解した上での「企画力」であり、それを裏付ける客観的な「データ分析力」、そして変革をやり抜く「合意形成力と強い意思決定」です。
30代で人事戦略に携わりたいあなたにとって、日々のオペレーション業務の延長線上に求めるキャリアはありません。
「小さな変革」を積み重ね、外部ネットワークを通じて「経営視点」を磨き、ご自身の経験を戦略的な成果として言語化していくことが、次なるキャリアへの鍵となります。
MS-Japanでは、戦略人事ポジションへの転職を目指す方に向けて、スキルアップに役立つ情報提供はもちろん、あなたの実績を最大限にアピールするためのキャリアカウンセリングと求人紹介を行っています。
ぜひ、あなたの戦略人事キャリア実現に向けて、一歩踏み出してみませんか。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、化粧品会社へ入社し美容部員として従事。全国各地で販売業務や新規店舗の教育係を経てMS-Japanへ入社。
現在はキャリアアドバイザーとして経理・人事・総務を中心に担当。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 会計事務所・監査法人 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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