税理士科目合格者は一般企業に転職できる?メリットや活かせる科目など

税理士科目合格者の中には、「科目合格を活かして一般企業へ転職したい」と考える方も少なくありません。
近年、一般企業において税理士科目合格者の採用ニーズが高まっており、合格科目によっては転職時に有利となる可能性があります。
本記事では、転職市場での評価ポイントや企業から求められるスキル、転職を成功させるコツについて具体的に解説します。
税理士科目合格者は一般企業に転職できる?
税理士科目合格者は、一般企業への転職においても十分に活躍が見込めます。
以前は税務対応をすべて顧問税理士に任せていた企業でも、近年では「税務リスクを最小限に抑えたい」「社内での判断力を高めたい」という理由から、会計や税務に明るい人材を採用する動きが加速しています。
特に、上場企業やそのグループ会社、IPO準備中のベンチャー企業、M&Aや再編を積極的に進めている企業では、税理士科目合格者のような会計・税務に強い人材を必要とする傾向が強く見られます。
また、中小企業においても、少人数で経理・財務業務を幅広くカバーする中で、専門知識を持つ人材へのニーズは根強くあります。
主に経理・財務部門での需要が高い
一般企業における主な活躍の場は、経理・財務部門です。
月次・年次決算や原価計算、債権債務管理、資金繰り、税務申告の補助などの日常業務において、科目合格で身につけた知識を活かすことができます。
また、管理会計や経営企画といった分野でも、会計の理論と実務を理解している人材は重宝されます。
予算の作成、業績分析、経営層へのレポート作成など、企業の意思決定をサポートするポジションにもチャレンジが可能です。
さらに、会計知識を活かして、内部監査や内部統制の業務に携わるケースもあります。
一般企業で評価されやすい科目は?
税理士試験の科目合格は、専門性の高さだけでなく、努力を積み重ねてきた証として一般企業でも高く評価されます。
その中でも、企業の実務と直結しやすい科目は特に強みとして認識されやすく、転職時のアピール材料になります。
ここでは、実務において評価されやすい代表的な科目を解説します。
簿記論
一般企業では、経理職を採用する際に日商簿記などの資格保有者が評価されることが一般的です。
そのため、税理士試験の簿記論に合格していることで、高度な知識を有する人材と見なされやすくなります。
仕訳・伝票処理といった日常業務だけでなく、月次・年次決算の基礎部分を理解している人材として信頼され、「自律的に業務を遂行できる人材」という印象を与えられるのが強みです。
経理経験が浅い方でも、簿記論合格の実績は、知識面での評価につながるでしょう。
財務諸表論
財務諸表論に合格していると、財務諸表の作成手順や会計理論に関する体系的な知識を持っていることが示せます。
企業の経理実務では、単に数字を処理するだけでなく、「その数字が何を意味しているのか」を理解する力も求められます。
財務諸表論合格者は、財務三表のつながりや勘定科目の意味を深く理解しており、上司や経営層への報告・説明といったシーンでも力を発揮できます。
管理会計や経営企画の分野を目指す方にとっても、ベースとなる知識として評価されやすい科目です。
法人税法
法人税は、すべての企業に関係する重要な税目であり、申告や税務判断には専門的な知識が必要です。
法人税法の合格者は、複雑な計算や根拠を理解していると見なされ、税務申告の補助や社内での確認作業を任せやすい人材として重宝されます。
たとえ税務申告を税理士に依頼していたとしても、社内に法人税法の知識を持つ人がいることで、税理士とのやりとりがスムーズになり、資料の準備や判断もスピーディーに進められます。
知識だけでなく、業務全体の効率化にもつながる点で、企業にとっては大きなメリットです。
消費税法
消費税法は、税理士試験の中でも最も実務との結びつきが強い科目の一つです。
仕入税額控除の判断や課税・非課税の区分、インボイス制度への対応など、日常的な経理業務の中でも頻繁に登場する論点をカバーしています。
そのため、消費税法に合格している方は、日々の業務において即戦力として活躍できると見なされやすく、特に中小企業やベンチャー企業のように少人数で経理を回している職場では大きな武器になります。
企業としても「実務の判断を任せられる人材」として、安心して採用できる人材と評価されます。
その他の科目は業種・業務内容によって評価が変わる
ご紹介した4科目以外は全く役に立たないというわけではありません。
相続税法や所得税法は、多くの一般企業の経理部門ではあまり扱わない分野です。
しかし資産管理部門を持つ企業や、グループオーナー企業、または財務コンサルティング会社などでは評価されることがあります。
どの科目が活かせるかは、企業の業種やポジションによっても異なるため、自身の経験や志向とマッチする職場を選ぶことが重要です。
税理士科目合格者が一般企業に転職するメリット・デメリット
転職活動を始める前に、税理士科目合格者が一般企業に転職するメリット・デメリットを把握しましょう。以下で詳しくご紹介します。
税理士科目合格者が一般企業に転職するメリット
安定した環境で長く働きやすい
一般企業の多くは、福利厚生や労働時間の整備が進んでおり、比較的安定した働き方が可能です。
特に大手企業では年間休日や残業管理が徹底されているため、プライベートとのバランスを取りながら長期的にキャリアを築くことができます。
また、社内業務が中心になるため、複数のクライアント対応に追われるような慌ただしさが少なく、計画的に業務を進めやすい点も特徴です。
将来的なキャリアの選択肢が広がる
一般企業での経験は、経理・財務にとどまらず、管理会計、経営企画、内部統制など、より経営に近いポジションへとキャリアを広げられます。
税務の知識に加え、事業理解や経営視点を身につけることで、企業内でのキャリアアップを目指すことができるでしょう。
税理士科目合格者が一般企業に転職するデメリット
税務に特化した実務経験を積みにくい場合がある
一般企業では、法人税や消費税の申告業務を外部の税理士や会計事務所に委託しているケースが多く、自社で完結する税務実務は限られています。
そのため、税務に関する専門性を深めたいと考えている方にとっては、実務経験が思うように積めない可能性があります。
希望する業務に関われるとは限らない
企業によっては経理や財務の業務範囲が明確に分かれていなかったり、逆に分業が進みすぎていて、一部の業務しか担当できなかったりすることもあります。
入社後の配属や業務内容によっては、知識を十分に発揮できない場面もあるため、事前に求人情報をよく確認することが重要です。
税理士試験受検への理解・支援を得にくい
税理士法人や会計事務所に比べると、一般企業では税理士資格の取得支援制度が設けられていないことも少なくありません。
試験勉強との両立を目指している方にとっては、時間の確保や受験への理解を得にくい環境となる可能性があります。
税理士科目合格者が一般企業への転職を成功させるには?
ここでは、税理士科目合格者が一般企業への転職を成功させるために押さえておきたいポイントをご紹介します。
転職活動を円滑に進めるための参考としてご活用ください。
応募先の業務内容を事前に確認
一般企業といっても、経理・税務の業務範囲は企業規模や体制によって異なります。
大手企業では税務は分業化されており、補助的な業務が中心になることが多い一方で、中小企業やベンチャーでは決算から申告書の作成補助まで幅広く関われる場合もあります。
自分の目指すキャリアや活かしたいスキルに応じて、企業の業務体制や担当範囲を事前に確認しておくことで、長期的に働くことが可能です。
転職理由は「前向きさ」を意識
科目合格者が一般企業へ転職する背景として、「会計事務所に勤務しながら税理士を目指して税理士試験を受験していたものの、キャリアの方向性を変えて一般企業に転職する」というケースは珍しくありません。
この場合、伝え方によってはネガティブなイメージを与える恐れがあるため、面接では前向きな理由を伝えることが重要です。
たとえば「税理士資格の取得を断念した」などの表現は、受け取り方によってはマイナス印象を与えるおそれがあります。
これまで培ってきた経理業務の経験をどのように活かしたいのか、そしてどのようなキャリアを築いていきたいのかなど、これからのキャリアプランについて前向きに伝えると好印象につながります。
関連業務や活かせるスキルで「即戦力」をアピール
業務経験がないポジションに転職する場合には、自身の長所やスキルを経理業務でどのように活かせるのかを明確に提示する必要があります。
採用担当者から「即戦力としての活躍が期待できる」と判断してもらえるように、なるべく具体的なエピソードを交えながらアピールするとよいでしょう。
たとえば、「仕訳から月次決算の補助まで一通り経験している」「法人税の計算書作成を手伝っていた」など、具体的な業務内容を交えて話すことで、企業側に業務イメージを持ってもらいやすくなります。
転職エージェントを活用する
税理士科目合格者の転職は、業界特化型転職エージェントの活用がおすすめです。
管理部門・士業に特化した転職エージェントのMS-Japanは、税理士科目合格者の転職に精通したアドバイザーが転職をサポートします。
キャリアプランの提案や希望に合わせた求人の紹介、応募書類の添削や面接対策など、様々なサポートを受けられます。
また、応募企業の担当者の情報や雰囲気なども分かるため、希望に合う転職先を見つけやすくなります。
税理士科目合格者が一般企業へ転職した事例
以下では、MS-Japanを活用して一般企業への転職を成功させた税理士科目合格者の事例を3件ご紹介します。
会計事務所での経験を活かして一般企業へ転職した税理士科目合格者の事例
Tさん(30代/男性)
資格:税理士試験2科目合格(簿記論 財務諸表論)
転職前:個人会計事務所
転職後:一般企業
Tさんは残業の多さや福利厚生の不十分さを背景に、長期的に安定して働ける環境を求め、一般企業への転職活動を始めました。
企業選びでは「一般企業であること」と「福利厚生の充実」を重視しました。
様々な企業を見ていく中で、事務所経験のみでも応募可能な企業が多いと気づいた一方で、希望条件に合う企業との出会いには苦労しました。
最終的には正当な評価制度が整った環境と充実した福利厚生に魅力を感じ、今後の成長と年収アップが見込める企業で新たな一歩を踏み出しました。
年収200万円アップを実現した税理士科目合格者の転職成功事例
Mさん(30代/男性)
資格:税理士試験3科目合格(簿記論 財務諸表論 消費税法)
転職前:中規模税理士法人
転職後:東証プライム上場企業(年収200万円アップ)
3科目合格を機に、新卒で入社した企業の営業担当から中堅規模の税理士法人へ転職したMさん。
業務内容にはやりがいを感じていたものの、年収の伸びに限界を感じ、結婚をきっかけに収入面の向上を目指して再度転職活動を開始しました。
転職活動では、上場企業やその子会社に絞って応募しました。
企業ごとの募集背景や課題など、ホームページには掲載されていない情報を事前に把握し、志望動機や将来像を自分の言葉で伝えることを意識されていました。
税務知識に加え、営業で培ったコミュニケーション力も高く評価され、最終的に2社から内定を獲得。
税務の専門性を活かしつつ経理にも関われる企業への転職を果たし、年収も200万円アップと大きな成果を実現されました。
ワークライフバランスの両立と年収アップを実現した税理士科目合格者の転職成功事例
Aさん(20代後半女性)
資格:税理士試験4科目合格(簿記論 財務諸表論 法人税 消費税)
転職前:中堅税理士法人
転職後:一般企業(年収150万円アップ)
税理士試験4科目に合格していたAさんは、業務が多忙で最後の1科目に取り組む時間が確保できず、働き方を見直すために転職を決意しました。
税理士法人に限定せず、勉強と両立できる環境を重視して活動を進めた結果、残業が少なく、税務経験や英語力が活かせる外資系企業への転職が決定しました。
将来的に管理職も目指せるポジションで、年収アップも実現できました。
業務の多忙さから自己研鑽の時間を確保しにくい状況が多い中、Aさんは理想の働き方を見極め、キャリアと試験勉強の両立を可能にする環境を手に入れました。
税理士科目合格者向けの一般企業求人情報
ここでは、MS-Japanで取扱っている求人のうち、税理士科目合格者向けの一般企業求人をご紹介します。
【経理(連結決算)】東証プライム/IFRS導入/HD経理/大手飲料メーカー
仕事内容 |
・月次、四半期、連結決算業務 ・有価証券報告書や決算短信の開示書類作成 ・税務業務 ・決算や開示に係る監査法人との折衝 |
必要な経験・能力 |
いずれか必須 ・会計士、税理士、USCPAなどの資格をお持ちの方(科目合格者も歓迎) ・一般企業または事務所・監査法人での年次決算のご経験 |
想定年収 |
700万円 ~ 980万円 |
税務スペシャリスト【税理士】/大手総合デベロッパー
仕事内容 |
・法人税、消費税、事業所税等の税務申告書作成 ・税務調査対応 ・税制改正対応 ・日常経理、事業部門・関連会社との調整及び税務相談への対応 ・上記に関わる業務改善全般 |
必要な経験・能力 |
いずれか必須 ・税理士(科目合格者可) ・公認会計士(税務経験のある方) |
想定年収 |
700万円 ~ 1,200万円 |
税理士科目合格者のキャリア・転職でよくある質問
ここでは、税理士科目合格者のキャリアや転職でよくある質問についてまとめました。
1科目合格でも転職は可能ですか?
1科目のみの合格でも転職は可能です。特に、企業の経理・税務業務と関連性の高い「簿記論」「財務諸表論」「法人税法」「消費税法」などは、たとえ1科目でも知識を証明する材料として評価されることがあります。
重要なのは、「その科目の知識を業務にどう活かせるか」を具体的に伝えることです。
「法人税法の知識を活かして申告業務の補助ができる」「簿記論で得た理解を仕訳や決算業務に応用できる」など、実務との関連性を示すことで、企業側に自身のスキルを適切に評価してもらえる可能性が高まります。
一般企業に転職した後、税理士資格を取得するメリットはありますか?
一般企業で働く際、必ずしも税理士資格が必要というわけではありません。
しかし、将来的にキャリアの選択肢を広げたいと考えている方にとっては大きなメリットがあります。
たとえば、税務に強みを持つ人材として、インハウスタックスや財務戦略といった専門的なポジションを目指せる可能性があるほか、企業によっては資格手当の支給や昇進要件として評価される場合もあります。
また、実務経験と資格をあわせて持っていれば、将来的に会計事務所や税理士法人への転職、あるいは独立といった選択肢も視野に入れやすくなります。
ただし、企業によっては税理士資格取得を前提としたキャリアパスがない場合も少なくありません。
今後の働き方やキャリア目標を明確にしたうえで、取得を目指すかどうかを検討することが重要です。
履歴書で税理士科目合格はどう書けばよいですか?
履歴書に税理士科目合格の実績を記載する場合は、「資格」欄や「免許・資格」欄に記入します。複数科目に合格している場合は、それぞれ明記しましょう。
1科目のみでも、必ず記載してください。「税理士試験受験中」とだけ書くよりも、どの科目に合格しているかを具体的に示すことで、企業側に知識レベルを正確に伝えることが可能となります。
<記載例>
年 | 月 | 免許・資格 |
---|---|---|
20XX | XX | 税理士試験 簿記論・財務諸表論 合格 |
20XX | XX | 税理士試験 法人税法 合格 |
(税理士試験法人税法・消費税法 受験予定) |
まとめ
税理士科目合格者は、一般企業への就職・転職時に優遇されるケースがあります。
特に、簿記論や財務諸表論、法人税法、消費税法といった経理業務に直結する科目に合格していると「実践能力が高い」とみなされ、科目合格者以外の方と比較した際に大きな強みとして評価されやすくなります。
ただし、場合によっては「税理士になることを断念した人」といったネガティブな印象を持たれる恐れがあります。
一般企業への就職・転職を希望する前向きな理由を伝えることが重要です。
もし転職活動に不安を感じる場合、あるいは科目合格を活かしてより良い条件での転職を成功させたい場合には、ぜひ管理部門・士業の転職に特化した転職エージェントのMS-Japanにご相談ください。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、カーディーラ・小売業を経験し、2008年からMS-Japanでリクルーティングアドバイザーとキャリアアドバイザーを兼務しております。
会計事務所・監査法人 ・ コンサルティング ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ USCPA ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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