転職で評価される会社法の法務経験とは?アピールすべき実務スキル(後編)

この記事は後編です。前編の記事はこちらをご確認ください。
前編では、採用担当者が本当に評価する会社法経験として、「株主総会・取締役会運営」「M&A・組織再編」「コンプライアンス・内部統制」などの実務経験を中心に、企業フェーズごとに求められるスキルの違いを整理しました。
あわせて、スタートアップ・IPO準備企業・上場企業それぞれで重視される実践的なスキルや、事業推進に寄与する“参謀型”法務人材の価値についても解説しました。
後編では、会社法スキルを効果的に伝える職務経歴書の書き方や面接でのアピール方法、未経験分野を補う応用力の見せ方、そして実際に会社法経験を武器にキャリアを広げた事例を紹介します。
評価が劇的に変わる!会社法スキルが伝わる職務経歴書の書き方【例文あり】
職務経歴書で最ももったいないのは、「株主総会を担当」「M&Aを担当」といった事実の羅列で終わってしまうことです。
採用担当者は、その経験を通じて「何を実現し、どう貢献したのか」を知りたいのです。
自身の行動と、それによってもたらされた「成果」までを具体的に記述することで、評価は全く変わります。
【NG例】
・定時株主総会の運営を担当した。
・M&Aプロジェクトにおいて、法務DDを担当した。
【OK例:IPO準備企業志望者のケース】
定時株主総会の主担当として、招集通知等の法定書類作成から議事録作成までを統括。特に、前年度に実施したM&Aに関する株主からの質問を想定し、事業部門やIR部門と主体的に調整を行い、詳細な回答シナリオを作成しました。結果、当日は円滑な議事進行を実現し、全議案の承認可決に貢献しました。
【OK例:M&A経験者のケース】
〇〇事業の買収プロジェクト(株式譲渡)において、法務DDから契約交渉までを担当。DDで発見した潜在的な訴訟リスクについて、事業への影響と対策を経営陣に具体的に説明し、最終的な買収判断をサポートしました。この提言が、株式譲渡価格の交渉材料の一つとなり、リスクを織り込んだ形でのM&A実現に貢献しました。
面接官を唸らせる、会社法スキルの面接アピール術
面接では、職務経歴書の内容を自身の言葉で、エピソードとして語ることが求められます。
面接官、特に法務部長クラスは、「困難な状況をどう乗り越えたか」「経営層にリスクをどう伝えたか」といった質問を通じて、候補者の課題解決能力とビジネス感覚を見極めています。
よくあるNGアピールは、専門用語を並べすぎて「結局、会社にどう貢献したのか」が伝わらないケースや、「弁護士と相談して進めました」と、外部への依存が強く感じられる話し方です。
高く評価されるのは、「自分が意思決定をサポートした瞬間」を具体的に語れる候補者です。
「法的なリスクを指摘するだけでなく、『事業目的を達成するためには、A案とB案があり、それぞれ法務リスクと事業メリットはこうです』と複数の選択肢を提示し、事業部門の意思決定を後押しした」といったエピソードは、単なる評論家ではない、事業貢献意欲の高い人材として強く印象に残ります。
会社法「特定分野」未経験でも評価されるアピール法
「M&A未経験」「IPO準備経験なし」といった方でも、転職を成功させることは十分に可能です。
重要なのは、これまでの経験の中から、志望する業務に応用可能なポータブルスキルを見つけ出し、「応用可能な強み」として具体的に示すことです。
例えば、M&A未経験ながら事業会社への転職を成功させた方は、契約法務の経験をアピールする際に「複数の事業部門を巻き込みながら、全く新しいサービスの契約スキームをゼロから構築した経験」を強調しました。
これにより、面接官は「複雑な状況でも論点を整理し、関係者をまとめてプロジェクトを推進する力がある」と判断し、採用に至りました。
未経験分野は、こうした応用力とキャッチアップへの意欲を示すことで、十分にカバーできるのです。
事例紹介:会社法経験を武器にキャリアを切り拓いたケース
最近の転職市場では、キャリアパスも多様化しています。
■ケース1:安定から挑戦へ(上場企業 法務 → 成長ベンチャー 法務責任者)
上場企業の安定した環境で法務経験を積んだ方が、年収は横ばいながらも、経営会議に参加できるベンチャーの法務責任者へ転職。自身の会社法知識を、よりダイレクトに経営に活かせるポジションを選んだケースです。
■ケース2:経験を武器に安定へ(ベンチャー 法務 → 大手企業 法務)
逆に、ベンチャーで法務・総務・労務などを幅広く経験した方が、大手企業に転職するケースも増えています。
かつては「専門性が低い」と見られがちだった経験が、今では「事業全体を理解した上での自走力」として高く評価されるようになっています。
まとめ:スキルを「伝える力」がキャリアを左右する
会社法の実務経験が転職市場で強力な武器になることは間違いありません。
しかし、どんなに優れたスキルを持っていても、転職活動が難航する方には共通点があります。
それは、
①経験を成果に結びつけて語れない(事実の羅列に終始)
②専門家としての視点に固執しすぎる(事業への協業姿勢が不足)
③待遇や役職などの条件に固執しすぎる
といった点です。
重要なのは、自身の経験を企業の課題と結びつけ、具体的な貢献イメージを採用担当者に提示することです。
この記事を参考に、ご自身の経験の価値を再発見し、それを的確に「伝える」準備を進めることが、理想のキャリアを実現するための第一歩となるでしょう。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。企業側を支援するリクルーティングアドバイザーとして約6年間IPO準備企業~大手企業まで計1,000社以上をご支援。
女性リクルーティングアドバイザーとして最年少ユニットリーダーを経験の後、2019年には【転職する際相談したいRAランキング】で全社2位獲得。
2021年~キャリアアドバイザーへ異動し、現在はチーフキャリアアドバイザーとして約400名以上ご支援実績がございます。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 法律・特許事務所 ・ 役員・その他 ・ 社会保険労務士事務所 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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