移転価格に強い税理士のキャリア戦略|必要スキルと成功事例(後編)

この記事は後編です。前編の記事はこちらをご確認ください。
前編では、移転価格税制の概要と、税理士がこの分野で担う主な業務内容について解説しました。
グローバル化の進展により、企業グループ内取引の適正性を確保する移転価格税務は、単なる税務対応を超えた戦略的な役割を果たすようになっています。
税理士にとっても、国際税務・会計の知識や英語によるコミュニケーション能力など、より高度な専門スキルが求められる分野です。
後編では、税理士が移転価格領域に携わることで得られるメリットやキャリアパス、さらに実際にこの分野で活躍している税理士の事例について詳しく解説します。
税理士が移転価格に関わるメリット
税理士が移転価格領域に専門特化する最大のメリットは、自身の市場価値を飛躍的に高め、キャリアの選択肢を大きく広げられることです。
移転価格税務は、税務の中でも特に専門性が高く、専門家が不足している分野です。
この領域の知識と経験を積むことで、代替が困難な専門性を身につけることができ、転職市場での価値が格段に向上します。
また、移転価格で培った専門性は、国際的なM&Aや組織再編といった隣接領域でも非常に高く評価されます。
M&Aのデューデリジェンスの際、対象企業の移転価格リスクを評価したり、組織再編後の最適な取引ストラクチャーを提案したりと、専門家として活躍の場は広がり続けています。
専門性の高さは、そのまま待遇の向上に直結します。
大手税理士法人や事業会社の国際税務部門では、他の税務分野と比較して高い年収や、マネージャー・パートナーなどの重要なポジションを期待できる傾向にあります。
自身のキャリアを次のステージに進めたいと考える税理士にとって、移転価格は魅力的なキャリアパスと言えるでしょう。
キャリアパス|移転価格に強い税理士の進路
移転価格に強い税理士のキャリアパスは、大きく分けて「専門特化」「事業会社への転職」「独立」の3つが挙げられます。
専門特化
まず、多くの税理士が目指すのが、大手税理士法人・FASでの専門特化です。
この進路では、多様な業界や規模の企業の案件に触れることができ、複雑な案件を通して専門スキルを徹底的に磨くことができます。
移転価格チームで経験を積み、マネージャー、パートナーへとキャリアアップしていくのが一般的な道筋です。
一方で、準大手・中堅税理士法人も有力な選択肢です。
若手のうちから裁量を持って案件をリードできる可能性があるため、幅広い業務経験を積むことができます。
事業会社への転職
次に、事業会社の国際税務部門への転職も挙げられます。
企業内では、単なるコンサルティングではなく、経営視点から移転価格戦略を立案・実行することができ、より事業に貢献する手応えを感じながら働けます。
独立
最後に、独立・コンサルティング領域での活躍です。
豊富な経験と高い専門性を武器に、自身のコンサルティングファームを立ち上げ、企業の移転価格リスクマネジメントを支援することも可能です。
事例紹介|移転価格キャリアを築いた税理士
ここでは、実際に移転価格領域でキャリアを築き、転職に成功した税理士の事例をご紹介します。
Aさん(30代後半・男性)は、海外に店舗を持つメーカーで営業職をされていました。
TOEIC800点以上の高い英語力と、営業で培ったコミュニケーション能力をお持ちでしたが、会計の実務経験はありませんでした。
彼は国際税務、特に移転価格に興味を持ち、キャリアチェンジを志望。面接では、海外営業時代に直面した、海外子会社との取引価格設定の難しさや、各国の税務ルールの違いに触れ、「自身の経験を活かし、企業の海外事業を税務の側面から支えたい」という熱意を具体的に伝えました。
結果、この高いポテンシャルと熱意が評価され、未経験ながらも大手税理士法人の移転価格部門への転職に成功しました。
転職後は、英語力を活かして海外拠点とのやり取りを率先して担当するなど、即戦力として活躍されています。
将来は海外勤務も視野に入れており、国際的なキャリアを順調に描かれています。
この事例が示すように、会計経験がなくても、英語力やコミュニケーション能力、そして「なぜ移転価格をやりたいのか」という明確な理由があれば、キャリアの道は拓かれます。
また、キャリアアップを見据えるなら、USCPA(米国公認会計士)の取得も有効な選択肢です。
USCPAの学習を通じて、日本の会計基準とは異なる米国会計基準(US GAAP)の知識を習得することは、海外の財務諸表を正確に読み解く上で非常に重要です。
海外企業の財務状況を分析したり、複雑な取引の会計処理を理解したりする際に、その知識はダイレクトに業務に活かせるため、自身の市場価値をさらに高めることができます。
まとめ
移転価格税制は、グローバル企業に不可欠な高度な専門分野であり、税理士の市場価値を飛躍的に高める魅力的なキャリアパスです。
この領域で求められるのは、国際税務・会計の深い知識に加え、高度な英語力とコミュニケーション能力です。
これらのスキルを習得することで、あなたは代替の難しい専門家となり、大手法人でのキャリアアップ、事業会社への転職、そして独立など、多様な道が開かれます。
国際的なキャリアへの熱意があるなら、今こそ移転価格の専門性を磨き、あなたのキャリアを次のステージへ進めましょう。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、幸せに働く人を増やしたいという想いから新卒でMS-Japanに入社。
上場企業を中心とした求人開拓から管理部門全般のマッチングを行い、2021年1月より専門性の高いJ事業部に異動。
主に会計事務所、監査法人、社労士事務所の担当を持ちながら士業領域での転職を検討している方のカウンセリングから案件紹介を両面で行う。
会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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