税理士がM&A業界へ転職するには?必要スキルとキャリアチェンジの方法(後編)

この記事は後編です。前編の記事はこちらをご確認ください。
<前編の要約>
税理士がM&Aの現場で担う役割が「税務リスクの守り」から、税務DD・組織再編設計・PMIまでを通じて企業価値向上に寄与する「攻め」へと拡張している点を整理しました。
さらに、組織再編税制や連結納税、国際税務に加え、財務モデリングやリスクをキャッシュフローで語る力が評価されること、そしてFAS→PE投資担当やCFO候補などの多様なキャリアパスについて解説しました。
引き続き後編では、M&A業務へのキャリアチェンジを成功させるための具体策を解説します。
M&A業務へのキャリアチェンジ
M&A業務へのキャリアチェンジ成功の鍵は、現在の実務経験を「ビジネス貢献度」で定量的に言語化し、その不足分を「財務知識の習得」という戦略的な行動で補うことです。
所属事務所でM&A案件に関わる機会を増やす
所属事務所で税務DDや組織再編のアドバイスに関与する機会を増やし、単なる経験の列挙ではなく、関与案件を「スキーム」「取引規模」「自分の役割」「最終的な成果」の4要素で整理します。
特に「〇〇という税務リスクを発見し、最終契約書の表明保証条項に反映させることで、〇〇円のリスクをヘッジ(回避・低減)した」といった具体的な貢献内容(成果の定量化)を示すことが、選考を突破する鍵となります。
M&Aに関わるファームへ転職する
現在の事務所で機会が少ない場合は、FASやM&Aを主業務とするコンサルティングファームの税理士部門へ移籍することを検討すべきです。
未経験スタートの場合でも、税理士資格と法人税務の経験が評価され、一般のスタッフ職より高めの年収(600万〜1,000万円)でスタートできるケースが多いです。
社外セミナーや研修を受講
実務経験を補完するために、財務モデリングや企業価値評価(DCF法など)に関する社外セミナーを受講し、経理・財務知識の習得を後回しにしないことが重要です。
「『企業価値評価』や『財務モデリング』関連の専門書を多読し、実務プロセスを独学で体系的にインプットした」など、専門性の拡張意欲と学習行動を職務経歴書に明記し、ポテンシャルを強くアピールしてください。
転職時は「関与案件数」「役割」「成果」を整理して職務経歴書に記載
最も重要なのは、単なる経験の列挙ではなく、「専門知識をビジネスリスクの管理と企業価値の向上にどう活かしたか」という視点で掘り下げて表現することです。
また、面接では「なぜそのミスが起こったのか(内部統制の欠陥)」といった経営課題の視点で語りかける「経営層への説明能力」が試されます。
税理士のM&A業界への転職事例
税理士のM&A業界への転職成功事例では、単なる資格や経験の有無だけでなく、「税務知識をビジネス成果に結びつけたか」という視点でのキャリアチェンジが鍵となっています。
事例1:税理士法人から大手FASへ
・経験: 35歳、中堅税理士法人で法人税務申告を約10年担当。小規模M&Aの税務DDを数件経験。
・成功要因: 組織再編税制の知識を体系的に学習し、職務経歴書では小規模案件でも「スキーム変更の提案により、クライアントの税負担を〇%軽減した」というディールへの貢献度を定量的にアピール。年収は1,000万円近くでスタートし、大規模なクロスボーダー案件に関わるキャリアを実現。
事例2:事業会社の経理からPEファンド投資担当へ
・経験: 42歳、事業会社の経理マネージャーとして勤務。グループ会社の再編や子会社売却に税務面から関与した経験あり。
・成功要因: 税理士資格に加え、経理マネージャーとして培った事業全体を俯瞰する視点とキャッシュフローベースでの財務分析力が高く評価された。税務知識を「投資家の視点」で語る能力が決め手となり、即戦力として採用。
まとめ|キャッシュフロー経験は経理キャリアを広げる鍵
経理+財務の知識を兼ね備えた人材は市場で最強のポジションを築けます。
税理士資格を持つ方がM&A業界だけでなく、一般の経理・財務領域も含めたビジネスキャリアを広げる上で、「キャッシュフロー」に関する経験や知識は、専門性を事業経営に直結させるための最も重要な鍵となります。
税理士の強みである税務知識は「過去の取引に対する正確な対応」ですが、M&AやCFO候補に求められるのは「将来の取引を最適化する戦略立案」です。
この視点の転換を可能にするのが、P/L・B/SからEBITDAやフリーキャッシュフローを算出し、企業の「真の収益力」を把握する財務知識です。
この「経理+財務」の知識を兼ね備えた人材こそが、市場で極めて高い評価を得られるのです。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
主に会計事務所、社労士事務所等の法人側担当として採用支援に従事。現在は法人側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当しております。
会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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