税理士は独立しても「食えない」は本当か？独立失敗を避けるための”段階的な独立戦略”とは

将来的に独立を目指している税理士にとって、「独立しても食えない」という噂は少なからず気になる話題です。
ただし、そうした状況に陥る原因の多くは、準備不足のまま独立に踏み切ってしまうことにあります。

この記事では、独立で「食えない」と言われる背景を整理したうえで、リスクを抑えて独立を成功させる「段階的な独立」という戦略、さらには独立準備に適した勤務先選びについても解説します。

なぜ税理士は独立しても「食えない」と言われるのか

まずは税理士が独立しても食えないと言われている理由を3つの視点から見ていきます。

競争激化に伴う顧問料の値下げ

税理士の登録者数増加に加え、クラウド会計ソフトの普及により、記帳代行などの通常業務では差別化が難しくなっています。
その結果、価格競争が激化し、顧問料の単価は下落傾向にあります。

特に独立初期は顧客獲得が不安定なため、低単価案件ばかりを抱える状況に陥りやすく、「食べていけるほどの収入」を確保できないケースが少なくありません。

独立時の営業力・人脈不足

顧客がWebやSNSで税理士を探す時代となり、「何もせず待っていれば、近隣の企業・個人から依頼が来る」という状況ではなくなりました。
税理士自身が情報発信を積極的に行うことが欠かせません。

そのため、営業や集客の知識・経験がない状態で独立すると、クライアント獲得に苦戦し、収入が不安定になるリスクが高まります。

AI・クラウド時代の変化に乗り遅れると差別化できない

AIやクラウド会計の普及により、記帳や申告といった定型業務は自動化が進み、付加価値が下がっています。
IT活用が不足したままだと、作業効率が上がらず、単価の低い仕事ばかりが残るリスクがあります。

一方で、経営助言や資金調達支援など、付加価値の高いサービスへシフトできれば、収益性は大きく向上します。
ITへの対応力が、独立後の差別化と売上を左右する時代になっています。

税理士事務所の廃業率の実態は？

「食えない」という表現が誇張に聞こえるかもしれませんが、データを見ると決して大げさではありません。

帝国データバンクの調査によると、2024年の業種別休廃業・解散率で最も高かったのが「税理士事務所」で、5.61％という結果でした。
これは、業界の高齢化に加えて、事務所を継ぐ人がいないという業界の人材不足の結果ですが、さらにその背景には税理士が稼ぎづらい状況があることがうかがえます。
弁護士や司法書士など他士業と比較しても高い水準にあり、業界全体の厳しさを示しています。

参考：全国企業「休廃業・解散」動向調査（2024年）｜帝国データバンク

特に、開業3〜5年が最初の大きな壁とされており、この期間に顧客基盤や収益が安定しないまま固定費がかさむと、廃業を選ばざるを得ない状況に陥りがちです。

また、廃業に至らないケースでも、
・給与水準を下回る収入が長期化
・実務に追われて新規営業ができない
といった“低空飛行”が続き、経営が停滞してしまう事務所も少なくありません。

つまり「廃業していない＝成功している」ではないという現実があるのです。
このリスクをどう回避するかが、独立成功の鍵になります。

独立を成功させる人の特徴

では、廃業リスクを乗り越えて安定した事務所経営を築く税理士には、どのような共通点があるのでしょうか。
独立を成功させた税理士の特徴は以下の3点です。

早期から人脈づくりをしている

勤務時代から経営者交流会や専門家コミュニティに参加し、金融機関や他士業との紹介ネットワークを築いています。
また、勤務先の顧客との関係づくりにも積極的です。

独立後に顧客をゼロから探すのではなく、紹介による安定的な集客ルートを持てることが強みとなり、開業直後から軌道に乗りやすくなります。

ITを活用し業務効率化できる

クラウド会計やAIツールを活用し、定型業務の工数を削減している点も特徴です。
空いた時間を営業やコンサルティングに充てられるため、低単価競争に巻き込まれず、高収益体質を実現できます。

専門特化や差別化の方向性が明確

歯科クリニック特化やスタートアップ支援など、特定領域で強みを築いています。
「選ばれる理由」が明確になるため高単価が維持でき、口コミ・紹介も広がりやすいです。

汎用的なサービスだけでは戦いにくい時代だからこそ、専門性が安定した顧客獲得につながるのです。

段階的な独立― 食えないリスクを最小化する戦略

独立で陥りやすい失敗は、冒頭でも触れた通り、十分な準備をしないまま開業してしまうことに起因します。
その解決策となるのが、勤務を続けながら独立準備を進める「段階的な独立」という戦略です。

段階的な独立とは？

段階的な独立とは、独立支援制度やのれん分け制度のある会計事務所に勤務し、営業・経営・マネジメントを実践的に学びながら、顧客基盤や人脈を育てていく方法です。

勤務先のノウハウやリソースを活かしつつ準備を進めることで、いきなり開業するより失敗確率を大幅に抑えられる点が特徴です。

段階的な独立がおすすめの理由

段階的な独立には、特に独立初期の不安を減らすメリットがあります。

• ・収入が安定する：勤務中は給与を得られるため、生活費の心配を抑えつつ独立準備に集中できます。
• ・営業力・コンサル力を実務で強化：営業同行や経営支援業務を通じ、独立後すぐに活かせるスキルを身につけられます。
• ・初期顧客の確保につながる：のれん分け制度を利用すれば、開業直後から収益を見込めます。

段階的な独立は「顧客ゼロ」「収入が不安定」といった、開業直後に最も大きいリスクを最小化できる働き方です。

独立を見据えた勤務先選びのポイント

段階的な独立を成功させるには、勤務先選びが最重要です。
どの事務所で経験を積むかが、独立後の収益性と成長スピードを大きく左右します。

独立支援制度・のれん分け制度がある事務所

まず確認したいのが独立支援制度やのれん分け制度の有無です。
顧客の引き継ぎルールや開業資金の支援、さらに開業後の連携など、内容は事務所によって大きく異なります。
制度が自分の描く独立像に合っているかを必ず確認しましょう。

担当顧客の幅が広く、経営層との接点が多いか

税務申告業務だけでなく、経営相談や資金調達支援などの高付加価値領域に触れられる環境が理想です。
多様な業種や経営者と接することで、「税務＋経営」に強い税理士として独立後の競争力を高められます。

DX推進・クラウド対応に積極的か

クラウド会計や業務効率化ツールに強いかどうかは、独立後の収益性に直結します。
効率化を習得できれば、一人開業でも利益を出しやすい体制を築けます。

教育体制・マネジメント経験を得られるか

将来的にスタッフを雇う可能性がある場合、採用・育成・マネジメントを勤務時代に学べるかが重要です。
組織運営力を早期に身につけた税理士ほど、事務所拡大で失敗しにくくなります。

独立支援している会計事務所の求人事例

MS-Japanでは、独立開業支援制度のある税理士事務所の求人も紹介可能です。
ここでは、実際に公開されている求人事例を紹介します。

まとめ

「税理士は独立しても食えない」という不安は、正しい準備と環境を選べば乗り越えられます。
段階的な独立によって、収入を確保しながら営業力・DX対応力・顧客基盤を育てることが可能です。
独立成功のカギは、独立支援制度がある事務所を選び、経験を積むことです。

独立を見据えたキャリアを考えたい方は、まずMS-Japanへご相談ください。