監査法人の転職先
監査法人のキャリア

公認会計士のファーストキャリアとして最もポピュラーな選択肢が監査法人です。公認会計士試験合格者の約9割が監査法人に就職し、監査業務に携わります。
監査法人でのキャリアステップは、各監査法人の昇格基準によりますが、一般的には、最初は(ジュニア)スタッフとして3~4年程度、同じチームの先輩・上司の会計士から指導を受けつつ、監査業務の基礎を積み上げます。
その後、シニアスタッフに昇格し、監査チームの主力メンバーとして活躍します。シニアスタッフに昇格すると、インチャージ(主査業務)と呼ばれる監査における現場責任者を任されることもあります。
順調に昇格すると、入社からおおよそ8~10年程度でマネージャーに昇格できます。昨今ではマネージャーに昇格するハードルも高くなっており、監査以外にも語学力などの、何かしらのセールスポイントが必要になるケースも少なくありません。
マネージャーの次の職位はシニアマネージャーになりますが、シニアマネージャーに昇格できる年次は個々人の能力によるところが大きく、早ければマネージャーになってから3~5年程度ですが、10年近くかかる場合や、昇格できないケースもあります。
さらにシニアマネージャーの中で熾烈な出世競争に勝ち残った、限られた人材がパートナーに抜擢され、監査法人の運営を担うことになります。
監査法人の種類
-
Big4監査法人とは、大手グローバルファームに所属している、国内最大規模の監査法人4つの総称です。
・有限責任あずさ監査法人(KPMG)
・EY新日本有限責任監査法人(Ernst & Young)
・有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)
・PwC Japan有限責任監査法人(PricewaterhouseCoopers)
※括弧内は所属するグローバルファーム名。
大手監査法人の定義は「上場国内会社を概ね100 社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査実施者が1,000名以上いる監査法人」とされており、クライアントは国内の大手・上場企業や外資系企業が中心です。
Big4監査法人は業種(セクター)別の組織運営体制を採用しており、金融、メーカー、テクノロジーなど、特定の業種に特化した監査チームがクライアントの監査を行います。
そのため、組織体制としては縦割りになっており、監査部門に所属する公認会計士は特定業種の監査業務を専門的に行っていることから、監査の品質が非常に高く保たれています。 -
準大手監査法人とは、上記のBig4(大手)監査法人に準ずる規模の監査法人であり、主に以下の4社を指します。
・太陽有限責任監査法人 (Grant Thornton International)
・仰星監査法人(Nexia)
・東陽監査法人(Crowe Global)
・三優監査法人(BDO)
準大手監査法人も大きな組織ではありますが、大手監査法人ほどの規模ではないため、業種(セクター)別の組織体制になっていない場合が多いです。そのため、事業会社、金融、パブリックなど様々なクライアントの監査を担当することができ、IPO監査などの通常の監査業務以外にも関与するチャンスが多いことが、準大手監査法人の特徴です。 -
中小監査法人とは、上記で紹介した大手・準大手監査法人以外を幅広く差します。
中小監査法人は数多く存在しており、監査法人ごとの特色も様々です。IPO監査を中心に行う監査法人や、パブリック監査のみを行う監査法人など、特色のあるクライアントに対応しているケースもあれば、税理士法人やコンサルティングファームを併設していて、監査法人に所属して監査業務を行いながら、税務や財務コンサルティングの経験を積める監査法人なども存在します。
特定領域で著名な会計士が代表を務めている、ワークライフバランスが良く、ゴールデンウィークでも休みが取れるなど、監査法人ごとに特色があります。
また、監査法人にもよりますが、大手や準大手と比較して昇格のスピードが速いことも多く、30代でパートナーに抜擢されるケースもあります。
監査法人の転職市場
2008年のリーマンショック後、ほとんどの監査法人が採用人数を絞ったため、会計士の就職氷河期が訪れましたが、その後市場の回復とともに採用ニーズも回復しており、現在では監査法人の転職市場は、転職希望者が優位な売り手市場になっています。
売り手市場となっている主な要因は2つあり、「監査業務の複雑化」、「公認会計士のキャリアフィールドの広がり」が挙げられます。

近年、大手企業の粉飾決算、不正会計などの大きな事件が起きたことを受け、金融庁が監査品質の向上や組織体制の強化を監査法人に求め、それに対応するために監査業務も細分化、複雑化する流れが続いています。
したがって、監査の工数は年々増えており、公認会計士1人当たりの業務負担が重くなっています。こういった状況を解消するため、監査法人は積極的な増員を行っているのです。
また、昨今では公認会計士のキャリアフィールドが広がっており、監査法人業界からの人員の流出が増えたことも、監査法人の人手不足の要因です。代表的な流出先としては、一般企業が挙げられます。
を見てみると、組織内会計士ネットワークの正会員は2014年12月末時点では985人だったところから、2023年12月末時点では2,418人と2.5倍近くまでその人数が増加しています。
上記の2つの大きな要因から、監査法人では十分な人材を確保することが難しくなっており、公認会計士は売り手市場となっているのです。
監査法人の転職成功のポイント
-
POINT
01大半の公認会計士は監査法人の勤務経験者です。そのため、転職先として再び監査法人を選ぶ理由は「前職の監査法人で叶えられないことを、別の監査法人で実現したい」という目的であると考えられます。
例えば、現在大手監査法人に所属していて、より幅広い業務に携わりたいと思ったことが転職のきっかけであれば、どのような業務内容に興味があるのかをより具体的に言語化しましょう。
会計士として幅広い業務に携わりたいのであれば、IPO業務や様々な業種のクライアントに対応できる準大手監査法人が向いているかもしれません。税務や財務コンサルティングなどに挑戦したいのであれば、中小監査法人が向いている可能性があります。
どの監査法人にも一長一短の特徴があり、面接を受けているうちに自分の転職目的を見失ってしまう方もいるため、転職活動初期に自分の転職の目的を明確にしておく必要があります。 -
POINT
02監査法人に転職する場合、転職先の監査法人の特徴をよく知っておかないと、入社後にミスマッチになるケースがあります。
大手監査法人であれば、監査部門の中でも複数のセクター(業種)やチームに分かれているため、法人内の組織体系を理解することからはじめる必要があります。どのポジションで求人が出ていて、入社後はどういった業務内容をするのかしっかりと把握したうえで、選考をうけることをおすすめします。
また、準大手・中小監査法人の場合、幅広い業務ができることが大きな魅力ですが、実際に自分が希望する働き方をしている人がいるのかは確認しておくべきでしょう。実際にあるケースとして、面接時には監査以外の業務にも挑戦できると聞いて入社したものの、実際に働いてみると監査チームにばかりアサインされて、結局は希望の業務ができずにミスマッチになってしまうこともあります。
入社後のミスマッチを防ぐために、情報収集は徹底して行いましょう。 -
POINT
03転職エージェントは様々な職種を取り扱う総合型エージェントと、特定の専門分野をもつ特化型エージェントに分けられます。 監査法人を目指す場合は、監査法人業界の特化型エージェントがおすすめです。
会計士の転職に詳しいキャリアアドバイザーから、各監査法人の特徴や強みなどの情報提供だけでなく、マッチ度の高い求人を紹介してもらえるでしょう。
MS Agentは士業・管理部門特化型転職エージェントとして30年以上の実績があり、会計士領域専門のアドバイザーも多数在籍しています。
MS-Japanを利用した会計士の
転職成功事例
転職成功事例一覧を見る
おすすめ転職トピックス
新着転職トピックス
-
公認会計士の独立|注意点やメリット・デメリット、必要な準備など
2025年09月05日 -
なぜ「公認会計士はやめとけ」と言われるのか?5つの理由と実態を解説
2025年09月02日 -
【令和7年公認会計士試験|論文式試験】直近合格率や結果発表後の流れなど
2025年08月18日 -
令和7年(2025年)公認会計士試験の日程|試験から合格後の流れ
2025年08月15日 -
【公認会計士の転職】完全ガイド|おすすめの転職先17選や年代別転職のポイントなど
2025年08月07日 -
公認会計士が独立した際によくある失敗は?後悔しないための準備とは
2025年06月30日
監査法人の会計士の転職・キャリアに関するFAQ
監査法人から事業会社への転職を考えています。MS-Japanには、自分のような転職者はどのくらい登録されていますか。
具体的な人数をお知らせする事は出来ませんが、より直接的に企業に関わりたい、会計の実務経験を積みたいと考えて転職を考える公認会計士の方が大多数です。 その過程で、より多くの企業に関わりたいという方は、アドバイザリーや会計事務所への転職を希望されます。当事者として企業に関わりたい方は事業会社を選択されます。 その意味では、転職を希望する公認会計士の方にとって、監査法人から事業会社への転職というのは、一度は検討する選択肢になるのではないでしょうか。
転職活動の軸が定まらない上、求人数が多く、幅が広いため、絞りきれません。どのような考えを持って転職活動をするべきでしょうか。
キャリアを考えるときには、経験だけではなく、中長期的にどのような人生を歩みたいかを想定する必要があります。 仕事で自己実現を図る方もいれば、仕事以外にも家族やコミュニティへの貢献、パラレルキャリアで自己実現を図る方もいます。ですので、ご自身にとって、何のために仕事をするのかを一度考えてみることをお勧めします。 もし、それが分からないようであれば、転職エージェントのキャリアアドバイザーに貴方の過去・現在・未来の話をじっくり聞いてもらい、頭の中を整理されることをお勧めします。くれぐれも、転職する事だけが目的にならないように気を付けてください。 今後の方針に悩まれた際は、転職エージェントに相談してみることも一つの手かと思います。
ワークライフバランスが取れる転職先は、どのようなものがありますか?
一般事業会社の経理職は、比較的ワークライフバランスを取りやすい為、転職する方が多いです。ただ、昨今では会計事務所、税理士法人、中小監査法人なども働きやすい環境を整備している法人が出てきていますので、選択肢は多様化しています。 また、一般事業会社の経理でも、経理部の人員が足りていなければ恒常的に残業が発生する可能性もございます。一方で、会計事務所、税理士法人、中小監査法人の中には、時短勤務など柔軟に対応している法人も出てきています。ご自身が目指したいキャリアプランに合わせて選択が可能かと思います。
監査法人に勤務している公認会計士です。これまで事業会社の経験は無いのですが、事業会社のCFOや管理部長といった経営管理の責任者にキャリアチェンジして、早く市場価値を高めたいと考えています。 具体的なキャリアパスと、転職した場合の年収水準を教えてください。
事業会社未経験の公認会計士の方が、CFOや管理部長のポジションに早く着くキャリアパスの王道は主に2つです。 一つは、IPO準備のプロジェクトリーダーとして入社し、IPO準備を通じて経営層の信頼を勝ち取り、経理部長、管理部長、CFOと短期間でステップアップする。 もう一つは、投資銀行などでファイナンスのスキルを身に着けて、その後、スタートアップ、IPO準備企業、上場後数年程度のベンチャーにファイナンススキルを活かしてキャリアチェンジすることをお勧めします。近年はCFOに対する期待が、IPO達成ではなく、上場後を見据えた財務戦略・事業戦略となってきているため、後者のパターンでCFOになっていく方が増えています。 年収レンジとしてはざっくりですが800~1500万円くらいでオファーが出るケースが一般的で、フェーズに応じてストックオプション付与もあります。
40歳の会計士です。監査法人以外のキャリアを積みたいのですが、企業や会計事務所でどれくらいのニーズがあるでしょうか。
企業であれば、会計監査のご経験をダイレクトに活かしやすい内部監査の求人でニーズが高いです。経理の募集もございますが、経理実務の経験が無いことがネックになるケースがあります。 会計事務所ですと、アドバイザリー経験の有無によって、ニーズが大きく異なります。また、現職で何らかの責任ある立場についており、転職後の顧客開拓に具体的に活かせるネットワークがある場合は、ニーズがあります。
MS-Japanの転職サービスとは
大手上場企業や監査法人、会計事務所(税理士法人)など、公認会計士の幅広いキャリアフィールドをカバーする求人をもとに、公認会計士専門のキャリアアドバイザーがあなたの転職をサポートします。
キャリアカウンセリングや応募書類の添削・作成サポート、面接対策など各種サービスを無料で受けることができるため、転職に不安がある公認会計士の方でも、スムーズに転職活動を進めることができます。


転職やキャリアの悩みを相談できる!
簡単まずは会員登録