30代会計士が知っておくべきIPO支援業務の価値|キャリアを飛躍させる戦略的選択とは
この記事は後編です。前編の記事はこちらをご確認ください。
前編では、IPO(新規株式公開)支援業務の全体像や、30代の公認会計士が果たす役割について解説しました。
IPO準備では、財務・会計の専門知識に加え、内部統制や開示体制の整備、そして経営陣・監査法人との調整力が求められます。
これらの経験は、単なる会計実務を超えて、経営視点やプロジェクトマネジメント力を身につける貴重な機会となります。
後編では、IPO支援経験が転職市場でどのように評価されるのか、企業が重視するスキルやアピール方法、実際の成功事例を交えながら詳しく解説します。
転職市場での評価ポイント
IPO支援経験は、転職市場において非常に高い評価を得られます。なぜなら、その経験が「即戦力」と「希少性」を同時に証明するからです。
上場準備プロセスを一通り理解している人材は限られており、特に、企業の成長フェーズにあるベンチャー企業や、上場を目指すスタートアップ企業から強く求められます。
具体的には、IPO準備企業のCxO候補・管理部長、上場企業の経理・財務部門のマネージャーといった要職に就くケースが多く見られます。
一方で、IPO支援経験がない場合でも、以下の経験があれば強力なアピールポイントとなります。
- ・上場企業での経理・財務経験
- ・内部統制、監査対応の経験
- ・M&Aや事業再生など非定型的な業務の経験
- ・ベンチャー企業での幅広い業務経験
IPO経験者が転職後に成功するか否かは、経験の「深さ」と「汎用性」にかかっています。
単に業務をこなすだけでなく、その経験を言語化し、新しい環境でどう活かせるかを説明できるかが重要です。
また、コミュニケーション能力と課題解決能力、そして変化を恐れないマインドセットも成功の鍵となります。
アピール方法と成功事例
IPO支援経験をアピールする際は、職務経歴書に具体的な成果を記載することが重要です。
単に「IPO支援業務に従事」と書くのではなく、関与した業務内容や成果を定量的に表現すると、採用担当者の目に留まりやすくなります。
最も評価されるのは、具体的な成果と課題解決能力を示すことです。
単に業務を行ったという事実だけでなく、その経験が組織にどのような価値をもたらしたかを明確に伝えることが重要です。
職務経歴書への記載例
「IPO準備企業にて、内部統制の整備をリード。全社の業務フロー見直しからマニュアル作成までを行い、監査法人からの指摘事項を〇〇件削減した。」
面接でのアピール
面接で「冷たさ」を感じさせないためには、人間性や協調性が伝わる話し方を意識することが重要です。
単にスキルや実績を語るだけでなく、その背景にある「人との関わり」や「感情」を織り交ぜることで、あなたの温かみやパーソナリティが伝わります。
例えば、チームメンバーと協力して困難な課題を乗り越えたエピソードや、業務改善を提案する際に他部署の理解や協力を得るために工夫した点などを具体的に話すと効果的です。
まとめ|IPO経験は将来のキャリアに直結する
30代の会計士にとって、IPO支援業務への関与は、単なるキャリアの選択肢ではなく、将来の市場価値を飛躍的に高める戦略的な投資と言えるでしょう。
この業務を通じて、専門知識だけでなく、プロジェクト推進力、改善提案力、そして多岐にわたる利害関係者との調整能力といった、次世代のビジネスリーダーに求められるスキルが身につくからです。
IPO支援経験は、上場企業のCFOや経営企画といった要職への道を開くだけでなく、自身の専門性を活かした独立や起業といったキャリアにも直結します。
もし現在のキャリアに行き詰まりを感じているのであれば、IPO支援業務への挑戦は、新たなキャリアを築くための重要なターニングポイントとなるはずです。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

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主に会計事務所、社労士事務所等の法人側担当として採用支援に従事。現在は法人側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当しております。
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会計士の転職・キャリアに関するFAQ
監査法人から事業会社への転職を考えています。MS-Japanには、自分のような転職者はどのくらい登録されていますか。
具体的な人数をお知らせする事は出来ませんが、より直接的に企業に関わりたい、会計の実務経験を積みたいと考えて転職を考える公認会計士の方が大多数です。 その過程で、より多くの企業に関わりたいという方は、アドバイザリーや会計事務所への転職を希望されます。当事者として企業に関わりたい方は事業会社を選択されます。 その意味では、転職を希望する公認会計士の方にとって、監査法人から事業会社への転職というのは、一度は検討する選択肢になるのではないでしょうか。
転職活動の軸が定まらない上、求人数が多く、幅が広いため、絞りきれません。どのような考えを持って転職活動をするべきでしょうか。
キャリアを考えるときには、経験だけではなく、中長期的にどのような人生を歩みたいかを想定する必要があります。 仕事で自己実現を図る方もいれば、仕事以外にも家族やコミュニティへの貢献、パラレルキャリアで自己実現を図る方もいます。ですので、ご自身にとって、何のために仕事をするのかを一度考えてみることをお勧めします。 もし、それが分からないようであれば、転職エージェントのキャリアアドバイザーに貴方の過去・現在・未来の話をじっくり聞いてもらい、頭の中を整理されることをお勧めします。くれぐれも、転職する事だけが目的にならないように気を付けてください。 今後の方針に悩まれた際は、転職エージェントに相談してみることも一つの手かと思います。
ワークライフバランスが取れる転職先は、どのようなものがありますか?
一般事業会社の経理職は、比較的ワークライフバランスを取りやすい為、転職する方が多いです。ただ、昨今では会計事務所、税理士法人、中小監査法人なども働きやすい環境を整備している法人が出てきていますので、選択肢は多様化しています。 また、一般事業会社の経理でも、経理部の人員が足りていなければ恒常的に残業が発生する可能性もございます。一方で、会計事務所、税理士法人、中小監査法人の中には、時短勤務など柔軟に対応している法人も出てきています。ご自身が目指したいキャリアプランに合わせて選択が可能かと思います。
監査法人に勤務している公認会計士です。これまで事業会社の経験は無いのですが、事業会社のCFOや管理部長といった経営管理の責任者にキャリアチェンジして、早く市場価値を高めたいと考えています。 具体的なキャリアパスと、転職した場合の年収水準を教えてください。
事業会社未経験の公認会計士の方が、CFOや管理部長のポジションに早く着くキャリアパスの王道は主に2つです。 一つは、IPO準備のプロジェクトリーダーとして入社し、IPO準備を通じて経営層の信頼を勝ち取り、経理部長、管理部長、CFOと短期間でステップアップする。 もう一つは、投資銀行などでファイナンスのスキルを身に着けて、その後、スタートアップ、IPO準備企業、上場後数年程度のベンチャーにファイナンススキルを活かしてキャリアチェンジすることをお勧めします。近年はCFOに対する期待が、IPO達成ではなく、上場後を見据えた財務戦略・事業戦略となってきているため、後者のパターンでCFOになっていく方が増えています。 年収レンジとしてはざっくりですが800~1500万円くらいでオファーが出るケースが一般的で、フェーズに応じてストックオプション付与もあります。
40歳の会計士です。監査法人以外のキャリアを積みたいのですが、企業や会計事務所でどれくらいのニーズがあるでしょうか。
企業であれば、会計監査のご経験をダイレクトに活かしやすい内部監査の求人でニーズが高いです。経理の募集もございますが、経理実務の経験が無いことがネックになるケースがあります。 会計事務所ですと、アドバイザリー経験の有無によって、ニーズが大きく異なります。また、現職で何らかの責任ある立場についており、転職後の顧客開拓に具体的に活かせるネットワークがある場合は、ニーズがあります。

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