公認会計士のアドバイザリー業務とは?仕事内容、身に付く知識やメリットについて

公認会計士といえば、弁護士・不動産鑑定士と並ぶ、文系の日本三大国家資格のひとつとして知られます。公認会計士試験は、経理・財務系の最難関ですが、一方で、公認会計士のキャリアパスとして財務に関する「アドバイザリー業務」が注目を集めています。
果たして、どのような仕事なのでしょうか。またアドバイザリー業務を行うやりがいや収入などについてもご紹介します。
公認会計士のアドバイザリー業務とは?
公認会計士の「アドバイザリー業務」とは、企業の取締役や監査役といった経営幹部に対して、企業の持続的成長や経営基盤の強化などに必要なアドバイスを送る、一種の経営コンサルティング業務を指します。
同じ経営コンサルティングでも、大企業のCOO(最高執行責任者)に向けた、企業の収益性に直接繋がる「攻め」のコンサルティングとは異なります。公認会計士のアドバイザリー業務は、「リスクコンサルティング」とも呼ばれる、守りのコンサルティングとされます。
つまり、公認会計士のアドバイザリー業務とは、企業活動の中で陥りがちなリスクを回避し、収益を上げるにあたって支障をきたす可能性やブレーキになりそうな要素をなるべく避け、収益性を改善させようとする施策に取り組むことを指します。
企業活動は、様々なリスクにさらされています。特定の事業に積極的に投資して、拡大を目指すこと自体にも「戦略リスク」「事業リスク」が伴います。その事業が顧客や取引先からの支持をうまく得られないと、投資を回収できずに破綻の危機に陥るおそれがあるからです。
また、海外進出にあたっては、先方の国の文化や慣習、法規制などを理解できていないせいで失敗してしまう「カントリーリスク」もあります。
現代の企業活動で、インターネットの利用は欠かせませんが、ハッカーの遠隔操作によってデータが書き換えられたり、あるいは盗み取られたり、社内の映像や音声が密かに監視されたりする「サイバーセキュリティリスク」もありうるのです。顧客の個人情報がハッキングされ、流出したなら、社会的信頼が一気に失墜し、企業にとっては大きな打撃となります。
そこで、様々な企業リスクの存在と切迫性をあらかじめ見極めて、企業に伝えて、リスクを事前に回避したり、あるいは事後的に解消したりする策を提案するのが、公認会計士のアドバイザリー業務です。
アドバイザリーは、公認会計士として企業の資金繰りについてもアドバイスを行うことがあります。必要に応じて金融機関を紹介し、融資実行に向けて様々なサポートを実施します。
アドバイザリー業務のやりがい
公認会計士にとって花形の職場とされているのが、監査法人です。企業の決算に伴って作成される貸借対照表や損益計算書の内容に間違いはないか、不正経理はないかをチェックする業務です。
監査法人で公認会計士が担当する業務には高い専門性が必要とされており、たとえ出産や育児といったプライベートな理由でいったん職場を離れても復帰できるケースもあります。そのため、公認会計士資格の強みを最大限に活かせる仕事だといえます。さらに、収入も高水準で安定しています。
一方で、監査業務は数字とひたすら向き合い、単純作業を頻繁に繰り返す、精神的・肉体的に追い込まれやすい職種ともいわれます。
その点、アドバイザリー業務を行う公認会計士は、会社の役員と向き合うなど人と関わりながら仕事をすることが多く、クライアント企業からの喜びを実感しやすい業務です。そのため、監査業務とはまた違う魅力があります。会社の重役を相手にしても臆することなく接することができ、コミュニケーション能力に自信がある方は、とてもやりがいを感じられるはずです。
公認会計士の中でも、数字の操作よりも知識の蓄積や整理が得意な人物のほうが、アドバイザリー業務と相性が良いかもしれません。そのため、ご自身の適性を考えた上で、監査法人からアドバイザリーに転身する公認会計士も増えてきています。
アドバイザリー業務を行う公認会計士の年収
公認会計士は、監査法人に勤めた後にアドバイザリー業務に転身することが多くなっています。よって、年収に関しては監査法人に勤めていた時と同等か、さらに上回るとされています。
監査法人に勤務すると、1年目でも年収600~700万円ほどで、キャリアを積めば1,000万円を超えることも多いです。ただし、この高収入は残業や休日出勤の多さから、時間外労働として賃金がプラスされていることも一つの要素となっています。
アドバイザリー勤務も、監査法人勤務に負けず劣らずの忙しさですので、結果的に高収入となるでしょう。ただし、いくら年収が高いからといって、働き過ぎて心身に不調をきたすようなことがあっては何にもなりません。自身の仕事ぶりを多くの経営者に期待されることは公認会計士の喜びかもしれませんが、体調に気をつけながら業務に励んでいただきたいです。
まとめ
企業のお金の動きを司る公認会計士にとって、監査法人は安定した高収入を得られる人気の職場です。しかし、数字とばかり向き合うので、神経を擦り減らしたり、黙々と数字に向き合ったりする場面も多いことから、自分の仕事の成果が見え辛いと感じる方もいらっしゃるようです。
その点、アドバイザリー業務は、経営者と直接向き合い、助言が功を奏せば、直接喜びや感謝の意を伝えられる魅力があります。
同じ公認会計士資格を持つ人でも、価値観によって仕事内容の向き不向きはそれぞれです。監査業務を経て、公認会計士としてさらなるキャリアアップを目指したい、人と関わる機会の多い仕事をしたいと考えるならば、ぜひともアドバイザリー業務へ転身・転職を考えてみてはいかがでしょうか。


この記事を監修したキャリアアドバイザー
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会計士の転職・キャリアに関するFAQ
監査法人から事業会社への転職を考えています。MS-Japanには、自分のような転職者はどのくらい登録されていますか。
具体的な人数をお知らせする事は出来ませんが、より直接的に企業に関わりたい、会計の実務経験を積みたいと考えて転職を考える公認会計士の方が大多数です。 その過程で、より多くの企業に関わりたいという方は、アドバイザリーや会計事務所への転職を希望されます。当事者として企業に関わりたい方は事業会社を選択されます。 その意味では、転職を希望する公認会計士の方にとって、監査法人から事業会社への転職というのは、一度は検討する選択肢になるのではないでしょうか。
転職活動の軸が定まらない上、求人数が多く、幅が広いため、絞りきれません。どのような考えを持って転職活動をするべきでしょうか。
キャリアを考えるときには、経験だけではなく、中長期的にどのような人生を歩みたいかを想定する必要があります。 仕事で自己実現を図る方もいれば、仕事以外にも家族やコミュニティへの貢献、パラレルキャリアで自己実現を図る方もいます。ですので、ご自身にとって、何のために仕事をするのかを一度考えてみることをお勧めします。 もし、それが分からないようであれば、転職エージェントのキャリアアドバイザーに貴方の過去・現在・未来の話をじっくり聞いてもらい、頭の中を整理されることをお勧めします。くれぐれも、転職する事だけが目的にならないように気を付けてください。 今後の方針に悩まれた際は、転職エージェントに相談してみることも一つの手かと思います。
ワークライフバランスが取れる転職先は、どのようなものがありますか?
一般事業会社の経理職は、比較的ワークライフバランスを取りやすい為、転職する方が多いです。ただ、昨今では会計事務所、税理士法人、中小監査法人なども働きやすい環境を整備している法人が出てきていますので、選択肢は多様化しています。 また、一般事業会社の経理でも、経理部の人員が足りていなければ恒常的に残業が発生する可能性もございます。一方で、会計事務所、税理士法人、中小監査法人の中には、時短勤務など柔軟に対応している法人も出てきています。ご自身が目指したいキャリアプランに合わせて選択が可能かと思います。
監査法人に勤務している公認会計士です。これまで事業会社の経験は無いのですが、事業会社のCFOや管理部長といった経営管理の責任者にキャリアチェンジして、早く市場価値を高めたいと考えています。 具体的なキャリアパスと、転職した場合の年収水準を教えてください。
事業会社未経験の公認会計士の方が、CFOや管理部長のポジションに早く着くキャリアパスの王道は主に2つです。 一つは、IPO準備のプロジェクトリーダーとして入社し、IPO準備を通じて経営層の信頼を勝ち取り、経理部長、管理部長、CFOと短期間でステップアップする。 もう一つは、投資銀行などでファイナンスのスキルを身に着けて、その後、スタートアップ、IPO準備企業、上場後数年程度のベンチャーにファイナンススキルを活かしてキャリアチェンジすることをお勧めします。近年はCFOに対する期待が、IPO達成ではなく、上場後を見据えた財務戦略・事業戦略となってきているため、後者のパターンでCFOになっていく方が増えています。 年収レンジとしてはざっくりですが800~1500万円くらいでオファーが出るケースが一般的で、フェーズに応じてストックオプション付与もあります。
40歳の会計士です。監査法人以外のキャリアを積みたいのですが、企業や会計事務所でどれくらいのニーズがあるでしょうか。
企業であれば、会計監査のご経験をダイレクトに活かしやすい内部監査の求人でニーズが高いです。経理の募集もございますが、経理実務の経験が無いことがネックになるケースがあります。 会計事務所ですと、アドバイザリー経験の有無によって、ニーズが大きく異なります。また、現職で何らかの責任ある立場についており、転職後の顧客開拓に具体的に活かせるネットワークがある場合は、ニーズがあります。

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