公認会計士のキャリア戦略|20代・30代から挑むM&A・財務デューデリジェンス
この記事は後編です。前編の記事はこちらをご確認ください。
前編では、公認会計士がM&A業界で活躍するための基礎知識として、財務デューデリジェンス(財務DD)の役割や重要性、そして20代・30代の会計士が担うポジションについて解説しました。
監査法人で培った専門知識や分析力、調整力は、企業の将来を左右するM&Aプロセスの中で大きな強みとなります。
後編では、企業が公認会計士に求める具体的なスキルセットや、転職市場での評価ポイント、さらに職務経歴書・面接での効果的なアピール方法について詳しく解説します。
企業が求めるスキルセット
M&A関連の業務で企業が公認会計士に求めるスキルセットは、短期間で的確な財務分析を行う力です。
M&Aの交渉期間は限定されており、短い時間で膨大な財務データを読み解き、核心的なリスクを見つけ出すスピード感が求められます。
特に、クロスボーダー(国際間)のM&A案件が増加している昨今では、海外の会計基準や法規制を理解し、英語で円滑にコミュニケーションを取る能力も非常に高く評価されます。
ビジネスレベルの英語力は、キャリアの選択肢を大きく広げる強みとなるでしょう。
また、どんなに優れた分析結果も、クライアントにわかりやすく報告書としてまとめる力がなければ価値は半減します。
複雑な財務データを視覚的に示したり、平易な言葉でリスクを説明したりするプレゼンテーション能力も、M&Aの現場では欠かせません。
転職市場での評価ポイント
M&Aに関連した財務デューデリジェンスの経験は、転職市場において非常に高く評価されます。
これは単に年収が上がるというだけでなく、その後のキャリアの選択肢が大きく広がることが最大のメリットと言えるでしょう。
特に、FASからPEファンドへの転職は、公認会計士のキャリアアップにおける成功事例として多く見られます。
FASで企業の「内部」を深く理解するスキルを習得した会計士は、PEファンドにおいて、投資先の選定や投資実行後のバリューアップ(企業価値向上)に貢献する重要な役割を担います。
これは、監査やコンサルティング業務とは異なる、より事業経営に近い視点での専門性の深化を意味します。
さらに、財務デューデリジェンスで培った幅広い知識と経験は、最終的に企業の経営を担うCFO(最高財務責任者)へと続くキャリアパスの強力な土台となります。
職務経歴書・面接でのアピール方法
転職において財務デューデリジェンス経験をアピールする際は、具体的な実績を数値で示すだけではなく、携わったM&A案件においてご自身が貢献したストーリーを語ることが最も効果的です。
職務経歴書のアピール例
単に担当案件の規模を記載するだけでなく、その案件で「どのような課題に直面し、それをどう乗り越えたか」というストーリーを盛り込みましょう。
これは、あなたの論理的思考力や問題解決能力をアピールする絶好の機会です。
<職務経歴書例文>
「売上高100億円規模の製造業M&A案件において、過去に不正会計があった可能性のある複雑な財務データに直面。簿外債務の徹底的な調査のため、通常の分析に加え、サプライヤーへのヒアリングや現場視察を自ら企画・実行。その結果、約2億円の潜在的な債務を発見し、クライアントの買収価格交渉に貢献しました。」
面接で評価される「調整エピソード」
面接では、単に専門知識があることだけでなく、「人間関係の摩擦をどう乗り越え、プロジェクトを前に進めたか」というエピソードが特に評価されます。
クライアントとの意見調整
買収先の財務データに疑義が生じ、クライアントと意見が対立したケース。この際、単に「データがおかしい」と主張するのではなく、「複数のデータソースと照合した結果、矛盾点があることを論理的に説明」し、「別の角度から分析を提案」することで、クライアントの信頼を得た、といった具体的な対応を伝えると良いでしょう。
社内でのメンバー調整
プロジェクトが遅延しそうな状況で、チームメンバーをどのように巻き込んで課題を解決したかというエピソードは非常に有効です。
「担当業務が多岐にわたり、メンバー間で業務が重複していたため、タスクを再分配し、メンバー一人ひとりの専門性を最大限に活かせるよう調整した結果、納期通りにプロジェクトを完了させた」といった具体的な行動を示すことで、あなたのリーダーシップと協調性が伝わります。
まとめ|財務デューデリジェンスの経験はキャリアを大きく広げる
M&Aを通じた財務デューデリジェンスの経験は、公認会計士のキャリアを大きく広げる強力な武器となります。
監査法人、コンサルティングファーム、そして事業会社のすべてで高く評価されます。
特に、20代・30代というキャリアの中核を築く時期にM&A経験を積むことは、市場価値を大きく押し上げ、将来のキャリアの可能性を飛躍的に広げるでしょう。
但し、公認会計士であっても監査法人の経験だけしかない場合、FAS業界への転職は年齢と経験のバランスを厳しく見られる傾向にあります。
20代から30代までに財務デューデリジェンスに携われるように計画的に転職することをおすすめします。
転職を成功させるための心構え
FASへの転職は、単なるキャリアチェンジではなく、公認会計士としての専門性をさらに高め、将来のキャリアパスを自らの意志で切り開くための重要な一歩です。
この転職を成功させるために、面接では以下の2つの質問に対する答えを明確にしておくことが不可欠です。
・「なぜFAS(M&A)をやりたいのか?」
・「FASでの経験を活かして、将来どうなりたいのか?」
この回答が曖昧だと、面接で不採用になる可能性が高まります。
自身のキャリアに対する明確なビジョンを持ち、この2つの質問に自信を持って語ることができれば、その熱意は必ず面接官に伝わり、あなたの転職成功を力強く後押ししてくれるでしょう。
あなたのキャリアの可能性は、今この瞬間から広がっています。
ぜひ、一歩踏み出し、未来の自分を形作るM&Aの世界に飛び込んでみませんか。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。法律事務所や会計事務所、監査法人、社労士事務所、FAS系コンサルティングファームなどの士業領域の採用支援、及びその領域でのご転職を検討されている方の転職支援を行っています。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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会計士の転職・キャリアに関するFAQ
監査法人から事業会社への転職を考えています。MS-Japanには、自分のような転職者はどのくらい登録されていますか。
具体的な人数をお知らせする事は出来ませんが、より直接的に企業に関わりたい、会計の実務経験を積みたいと考えて転職を考える公認会計士の方が大多数です。 その過程で、より多くの企業に関わりたいという方は、アドバイザリーや会計事務所への転職を希望されます。当事者として企業に関わりたい方は事業会社を選択されます。 その意味では、転職を希望する公認会計士の方にとって、監査法人から事業会社への転職というのは、一度は検討する選択肢になるのではないでしょうか。
転職活動の軸が定まらない上、求人数が多く、幅が広いため、絞りきれません。どのような考えを持って転職活動をするべきでしょうか。
キャリアを考えるときには、経験だけではなく、中長期的にどのような人生を歩みたいかを想定する必要があります。 仕事で自己実現を図る方もいれば、仕事以外にも家族やコミュニティへの貢献、パラレルキャリアで自己実現を図る方もいます。ですので、ご自身にとって、何のために仕事をするのかを一度考えてみることをお勧めします。 もし、それが分からないようであれば、転職エージェントのキャリアアドバイザーに貴方の過去・現在・未来の話をじっくり聞いてもらい、頭の中を整理されることをお勧めします。くれぐれも、転職する事だけが目的にならないように気を付けてください。 今後の方針に悩まれた際は、転職エージェントに相談してみることも一つの手かと思います。
ワークライフバランスが取れる転職先は、どのようなものがありますか?
一般事業会社の経理職は、比較的ワークライフバランスを取りやすい為、転職する方が多いです。ただ、昨今では会計事務所、税理士法人、中小監査法人なども働きやすい環境を整備している法人が出てきていますので、選択肢は多様化しています。 また、一般事業会社の経理でも、経理部の人員が足りていなければ恒常的に残業が発生する可能性もございます。一方で、会計事務所、税理士法人、中小監査法人の中には、時短勤務など柔軟に対応している法人も出てきています。ご自身が目指したいキャリアプランに合わせて選択が可能かと思います。
監査法人に勤務している公認会計士です。これまで事業会社の経験は無いのですが、事業会社のCFOや管理部長といった経営管理の責任者にキャリアチェンジして、早く市場価値を高めたいと考えています。 具体的なキャリアパスと、転職した場合の年収水準を教えてください。
事業会社未経験の公認会計士の方が、CFOや管理部長のポジションに早く着くキャリアパスの王道は主に2つです。 一つは、IPO準備のプロジェクトリーダーとして入社し、IPO準備を通じて経営層の信頼を勝ち取り、経理部長、管理部長、CFOと短期間でステップアップする。 もう一つは、投資銀行などでファイナンスのスキルを身に着けて、その後、スタートアップ、IPO準備企業、上場後数年程度のベンチャーにファイナンススキルを活かしてキャリアチェンジすることをお勧めします。近年はCFOに対する期待が、IPO達成ではなく、上場後を見据えた財務戦略・事業戦略となってきているため、後者のパターンでCFOになっていく方が増えています。 年収レンジとしてはざっくりですが800~1500万円くらいでオファーが出るケースが一般的で、フェーズに応じてストックオプション付与もあります。
40歳の会計士です。監査法人以外のキャリアを積みたいのですが、企業や会計事務所でどれくらいのニーズがあるでしょうか。
企業であれば、会計監査のご経験をダイレクトに活かしやすい内部監査の求人でニーズが高いです。経理の募集もございますが、経理実務の経験が無いことがネックになるケースがあります。 会計事務所ですと、アドバイザリー経験の有無によって、ニーズが大きく異なります。また、現職で何らかの責任ある立場についており、転職後の顧客開拓に具体的に活かせるネットワークがある場合は、ニーズがあります。

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