監査法人で働く会計士は、残業時間が長いから年収が高いのか?

公認会計士業界のキャリアパスの中でも「花形」の職場と言われている監査法人。多種多様な企業の財務状況と向き合う仕事で、他職種より高収入となる傾向にあります。ただ、それは「残業時間が長く、忙しいから」と考える方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、監査法人の働き方の実態や年収の目安などを紹介します。公認会計士の経験が活かせる転職先もご紹介しているので、今後のキャリアを考えたい方はぜひ参考にしてください。
監査法人の仕事は多忙?残業時間が長くなるケースとは
監査法人は多忙で残業時間が長いと言われていますが、実際は監査法人の規模などによって異なります。
とはいえ、公認会計士は独占業務である「監査」や、高い知識を活かしたアドバイザリーなど、仕事の性質上人に頼らざるを得ない業務が中心です。また、『日本公認会計士協会』によると、2024年1月現在の公認会計士は日本全国で35,568人と非常に少ないことから、簡単に人手を増やせません。そのため、一人あたりの負担が増えてしまっていると考えられます。
一般的に多忙で残業時間が長くなりがちなケースは以下となります。
財務諸表チェックを行う公認会計士
財務諸表チェックを担う公認会計士は、業務の特性上多忙となる傾向があります。特に、決算期が集中する3月や株主総会が集中する6月頃はこなさなければいけない業務が増えるため、この時期は残業時間が増加する人が多いです。
出張が多い公認会計士
担当するクライアントが事務所や倉庫をおいている場合は、その現場に足を運んで視察をすることで、その企業で棚卸などの在庫管理が適切に行われているか、内部統制は行き届いているかなどのチェックを行う必要があります。
そのようなクライアントが多い場合やクライアントの事務所や倉庫が各地にある場合は、移動に時間がかかってしまうため、必然的に残業となる可能性が高くなります。
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監査法人の年収はどのくらい?残業代なし・込みそれぞれご紹介
監査法人に入って最初のうちは、残業時間による時間外手当が支給されることで、他業種よりも年収が上がるのは確かです。
ただ、だからといって監査法人のベース給与が並以下というわけではありません。残業の多い他業種であっても、監査法人クラスの初任給を得ることができる業種は多くはありません。
監査法人の年収の目安は以下の通りです。
監査 | 残業代なし | 残業代込み |
---|---|---|
スタッフ | 500万円前後 | 600万円前後 |
シニアスタッフ | 650万円前後 | 800万円前後 |
マネージャー | 900万円~1,200万円前後 | 管理職のためなし |
シニアマネージャー | 1,200万円~1,500万円前後 | 管理職のためなし |
アドバイザリー | 残業代なし | 残業代込み |
---|---|---|
スタッフ | 550万円前後 | 650万円前後 |
シニアスタッフ | 700万円前後 | 850万円前後 |
マネージャー | 900万円~1,200万円前後 | 管理職のためなし |
シニアマネージャー | 1,200万円~1,500万円前後 | 管理職のためなし |
監査法人に財務諸表のチェックを依頼するクライアントは、財政状況に余裕のある大企業が多いため、監査法人の人件費の原資にも余裕があり、その分を所属する公認会計士(スタッフ)に還元しているといえるでしょう。
一方で、一般企業の方が福利厚生が充実している場合が多いです。そういった背景もあり、ベース給与が高く設定されている側面もあります。
なお、監査業務に入る公認会計士は専門職の一種のため、育児や介護、疾病などで長期休暇を取った後でも復職しやすいメリットがあります。復職してしばらくは、時短勤務で徐々に調子を整えていくことも可能です。
公認会計士の転職先は?
監査法人以外にも公認会計士が活躍できる職場は多くあります。
以下に公認会計士の転職先をご紹介します。
監査法人
前述の通り、「監査法人だから多忙で残業時間が長い」というわけではありません。近年では、働き方改革をしている監査法人も増えてきています。
ただし、検討する際は業務量やチームの人数、実際の残業時間などを確認する必要があります。そのため、転職エージェントを活用して企業のリアルな情報を収集すると良いでしょう。
税理士法人
税理士法人では、企業や個人の税務相談、税務申告、税務審査の対応など、税に関連する業務が中心です。
公認会計士の知識を活かし、税務戦略の立案や節税対策の提案などを行うことができます。比較的落ち着いた環境で専門性を深めることができるため、激務から一歩引いて専門性を追求したい方に向いています。
会計事務所
会計事務所では、中小企業や個人事業主からの経理代行、決算書作成、税務申告などを担当します。
クライアントの経営をサポートする役割が強く、比較的小規模な案件が多いため、対人関係を大切にしながらじっくりと業務に取り組むことができます。個々のクライアントと深い関係を築きたい方や、ワークライフバランスを重視したい方に適しています。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームでは、企業の経営戦略立案、業務改善、リスク管理など幅広いコンサルティング業務を行います。
プロジェクトによっては激務になることもありますが、戦略的な思考を活かし、企業の経営課題を解決するやりがいを感じることができます。新しいことへの挑戦を楽しめる方や、自己成長を望む方に向いています。
上場企業
上場企業では、経理・財務や経営企画、内部統制・内部監査のポジションとして採用されるケースが多いです。特に安定した風土の企業であれば、有給休暇や産休・育休の制度が整っていることはもちろん、日々の残業時間も短くワークライフバランスを両立しやすいでしょう。
同じ上場企業でも、公認会計士に求める仕事内容は異なるため、ご自身のキャリアプランを明確にしてから企業選びをするとミスマッチが少ないです。
ベンチャー企業
ベンチャー企業では、経理体制の構築や資金調達、監査法人や会計事務所の対応、内部統制の導入など様々なポジションで需要があります。
一見残業が多いと感じる方も多いかと思いますが、経営者が若い企業や出産・育児がこれからある世代が多い企業では制度が整っていたり、柔軟に新しい制度を取り入れたりしています。
ワークライフバランスも大切にしつつも、やりがいを感じることのできる転職先だと言えるでしょう。
金融機関
金融機関では、リスク管理、財務分析、融資審査などに公認会計士の専門知識を活用します。また、投資銀行部門ではM&Aなどの大型案件に関わる機会もあります。
業務の性質上、繁忙期は激務になることもありますが、金融業界特有のダイナミズムを経験でき、高い専門性を活かしてキャリアアップを目指すことができます。安定した環境で専門性を活かしたい方や、金融業界でのキャリアを積みたい方に適しています。
公認会計士の転職成功事例
監査法人から転職した公認会計士の転職成功事例をご紹介します。
自分の時間が欲しい!プライベートを充実させた30代・女性公認会計士の成功事例
Bさん(30代女性)
転職前:Big4監査法人
転職後:中堅監査法人
Bさんは、新卒から同じ監査法人で働いていましたが、次第にハードワークに追いつけなくなってきたため、転職を決意しました。
面接の中で、自身が貢献できる点を具体的にアピールした上で、自分の時間も確保しながら効率的に働きたい旨を伝えることを意識しました。その結果、先方からも高い評価を頂きBさん自身も希望が叶えられる中堅監査法人へ転職を成功させました。
ハードワークな日々を変えたい!上場企業へ転職を果たした30代・公認会計士
Oさん(30代男性)
転職前:Big4監査法人
転職後:上場企業
Oさんは30代で年収850万円以上と同世代と比較して高い年収でした。一方で、繁忙期は残業や休日出勤をこなしており、長期的な就業は困難だと考え、ワークライフバランスを重視した転職をすることにしました。
始めは経理、財務、内部監査、経営企画など、幅広い職種に応募していたものの、選考を進めていく中でキャリアアドバイザーと調整を行い、最終的にはこれまでの経験を活かせる内部監査のポジションで内定を獲得しました。
多忙な監査業務の間を縫ってスムーズな転職活動を実現!30代・公認会計士の成功事例
Kさん(30代男性)
転職前:Big4監査法人
転職後:ベンチャーキャピタル
Kさんは、監査法人にて約10年間監査業務や社内の業務改善などを経験しており、今回はその経験を活かして別の業界で働きたいという希望で転職活動を開始しました。
監査法人で多忙な日々を送りながら転職活動を進めるために、弊社からは「転職の軸を明確にすること」をお伝えしました。その上で希望が叶う求人をご紹介し、応募企業を5社に絞って選考を受けました。事前に転職軸を決めていたことで、2社の内定を獲得され、そのうちの1社で働くことになりました。
まとめ
監査法人は、専門性からやりがいを持って働ける専門性の高い仕事の一つです。ベースの給与自体も他職種と比較して高いものの、「残業時間が多いから給与水準が高い」というのはある側面ではその通りと言えます。特に繁忙期は業務量が多くなる傾向があります。
一方で、働き方改革を進めている監査法人も増えています。また、マネージャーやパートナーに昇格すると、高収入を確保しつつプライベート時間にも余裕ができるはずです。
ご自身が働く上で何を一番大切にしたいかを改めて考えた際に、現状に不安がある場合は転職を検討しても良いでしょう。
今後のキャリアにお悩みの公認会計士の方は、ぜひ「MS Agent」にご相談ください。キャリアプランのご提案や市場動向、あなたに合った求人のご紹介などサポートします。
まずは情報収集だけしたいという方も、お気軽にお問い合わせください。


この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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公認会計士が外資系企業に転職するメリットは何ですか?
公認会計士が外資系企業に転職するメリットは、「自分のペースで仕事ができる」「日系企業に比べて年収が高い」の2つです。 外資系企業は良くも悪くも実力主義のため、成果を出すことができていればプライベートの時間も確保しながら仕事をすることができます。 また、日系企業に比べて年収が高い傾向がありますが、福利厚生は日系企業の方が充実しているため、年収と福利厚生のどちらを重視するかを検討する必要があります。
公認会計士は外資系企業でワークライフバランスを重視した働き方が出来ますか?
外資系企業は日系企業に比べて実力主義な傾向が強いため、自分で労働時間を管理することができます。 また、今では日系企業でもリモートワークを採用している企業が多いですが、外資系企業は日系企業よりもリモートワークが普及しているため、働き方という意味でも外資系企業ではワークライフバランスよく働くことが可能です。
公認会計士は外資系企業でどのような部門に配属されることが多いですか?
公認会計士が外資系企業に転職する場合、「アカウンティング部門」もしくは「ファイナンス部門」のいずれかが有力な選択肢となります。 アカウンティング部門は、日系企業でいう経理部に当たり、ファイナンス部門は日系企業でいうと予算管理部門と経営企画部門のちょうど間ぐらいの立ち位置になります。
公認会計士が外資系企業で働くにはどのようなスキルが求められますか?
公認会計士が外資系企業で働くには、本国の経営陣や従業員とビジネス的な会話ができるレベルの語学力が必要です。 また、本国の所在地にもよりますが、US-GAAP、IFRS/IASといった海外の会計基準と日本の会計基準の違いをしっかりと理解しておく必要があります。 日本の公認会計士だけでなく、USCPAなどを取得しておくと外資系企業への転職には有利になります。
公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは高いですか?
公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは決して低くはありませんが、IFRS(国際財務報告基準)に関する知識と経験がある方には転職のチャンスがあります。 また、一定の英語スキルも必要にはなりますが、入社時に極端に高い語学力が求められるわけではありません。 尚、管理職を目指す場合は本国や他国の拠点とやり取りをするためにも、英語力は必須となります。
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