2025年06月04日

企業内会計士とは?転職のメリット・デメリットや年収、キャリアについて解説

近年、会計士の働き方の選択肢として「企業内会計士」が注目を集めています。
企業内会計士とは、監査法人やFAS、会計事務所でクライアントワークを行うのではなく、一般企業や行政機関などで自社に関する会計業務を行う公認会計士を指します。

この記事では、企業内会計士の特性や働き方、転職方法、給与など、さまざまな事項を総合的に解説しています。
企業内会計士に興味をお持ちの方は、ぜひご一読ください。

企業内会計士とは?

そもそも、企業内会計士の仕事は、監査法人と違い複数の会社を担当する必要はありません。
専門ファームでのコンサルティング・アドバイザリー業務ではなく、会社員の1人として組織の発展に貢献する役割を担います。
勤め先は一般企業だけでなく、非営利団体地方公共団体・大学等の教育機関も対象です。
社会全体における公認会計士のニーズは高く、企業内会計士の数も年々増加しています。

具体的な勤務内容としては、会社の内部から数字を作る、見通すことが主になります。
したがって、監査法人では「外の人間」としてやや批判的な目線からアドバイスするのに対し、企業内会計士は「自ら数字を組む」ことも業務に含まれ、予算策定で重要な役割を担います。

また、公認会計士の資格を取得していることから、仮に新卒採用であっても役職者候補として待遇されるケースは珍しくなく、必然的に他部署とのコミュニケーションを図る機会も増えます。
将来的に自社の会計全般の責任者を担う可能性もあるといえるでしょう。

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一般企業が企業内会計士を求める理由は?

一般企業が自社の社員として会計士を求める主な理由は2つです。

1つ目の理由は「会計基準の高度化」です。近年、「収益認識に関する会計基準」の公表など、新規会計基準の適用が進んでいます。
また、ビジネスにおける国境がなくなりつつある現代において、海外企業との競合は決して珍しいことではありません。
そこで、国際財務報告基準(IFRS)を導入する企業も増えてきました。こうした理由から高度化する会計基準に対応するために、自社で会計士を雇用するケースがあります。

2つ目の理由は「人材不足」です。社内の経理部や財務部の強化を図ろうと考えた際、まずは既存社員のスキルアップを検討する企業は少なくありません。
しかし、社員教育には時間がかかるだけでなく、講師となれる人材にも限りがあります。
そこで、すでに知識とスキルを兼ね備えている会計士を採用して、迅速かつ効果的に該当部署の強化を狙います。

実際、企業内会計士の数は年々増加しています。日本公認会計士協会によれば、組織内会計士ネットワーク会員数(全会員数)の推移は、以下の通りです。

ビジネス会計検定試験1級の結果推移上記のデータからもわかるように、2015年から2024年にかけて、2倍以上の数になっています。今後も企業内会計士の活躍が期待されるでしょう。

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企業内会計士の業務内容

企業内会計士の主な業務内容は、「経理業務」「財務業務」「経営業務」「内部監査」の4つです。
各業務内容を詳しく見ていきます。

経理業務

経理業務は、経費精算から決算、税務申告など企業のお金の流れを管理します。
特に上場企業など、会計監査を受ける一定規模以上の企業では、公認会計士の専門知識が求められる場面が多くあります。
具体的には、キャッシュフロー計算書有価証券報告書の作成単体決算だけでなく連結決算への対応が必要です。
また、企業会計と税務会計のズレを調整し、適切な期間配分を行う「税効果会計」など、高度な会計処理にも対応できる力が求められます。

財務業務

財務業務は、資産の適切な運用と資金調達を管理します。
金融機関や市場、投資ファンドなどからデッドファイナスエクイティファイナンスなど適した手法を用いて、資金調達を行います。
監査法人での経験を直接活かせる業務ではありませんが、これまでの経験の延長線上で、やりがいを感じられる業務ではないでしょうか。

経営企画

経営企画業務は、多岐にわたります。企業内会計士の場合、主に予算策定実績分析IRといった業務を任されることになります。
広がりとしては、M&APMI市場分析新規事業企画などがあるので、会計の領域から更に広げたい場合は魅力的な職種です。

内部監査

内部監査業務は、最も監査法人経験などの会計士としての知見が活かせる業務です。
これまで監査する側だった経験を活かして、当事者側として監査計画の立案実施監査法人対応を担います。

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企業内会計士として働くメリット

企業内会計士として働くメリットは、「評価の高さ」「当事者意識」「視野の広がり」「ワークライフバランスの向上」です。

給与面を比較すると、企業内会計士は監査法人で働く場合より低い傾向にありますが、企業内会計士には給与に引けを取らないほどのメリットがあります。

企業において特別な人材として評価される

一般企業にとって企業内会計士は、「高度な専門知識とスキルをもつ優秀な社員」です。
そのため、幹部候補として迎え入れられることも珍しくありません。将来的には企業戦略など、企業成長に直接的に貢献できるような業務にも携われます。

会社の数字に当事者として関われる

予算の作成1つをとっても、クライアントワークなのか、自社の予算を決めるのかでは、見えてくる数字やリスクに対する考え方などが大きく変わってきます。
1から予算を策定するためには、自社商品とその市場に対する深い理解、各部署との連携、経営陣を含む上層部との調整など、種々の対応が欠かせません。

多様な業務を通して、会社の数字に当事者として関わるという経験は、監査法人では得がたい経験です。企業内会計士ならではのやりがいでしょう。

違う専門分野の人と関われる

一般企業に入社すると、多職種の従業員と一緒に働くことになります。各人が違う分野の専門家として、知見やスキルをもっているでしょう。
たとえば、営業スキルマーケティング的思考力商品開発に関するノウハウなどは、ビジネスパーソンとして成長するうえで非常に重要な要素です。

監査法人で働くよりも、違う分野の専門家と関わる頻度は多くなる傾向があります。

ワークライフバランスが整えやすい

監査法人ではクライアントのスケジュールや都合に合わせて働かなければならないため、休みが不規則になったり、長時間労働が常態化したりすることがあります。
一方で、企業内会計士は社内でのスケジュール調整が多く、労働時間や休日を調整しやすいというメリットがあります。
ワークライフバランスが整い、公私ともに充実した生活を送れるでしょう。

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企業内会計士として働くデメリット

企業内会計士として働くデメリット企業内会計士は、監査法人やFAS、会計事務所とは異なり、特定の企業で経理・財務業務を担当します。
安定した雇用やワークライフバランスの良さなどのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。

以下、企業内会計士として働く際の代表的なデメリットを解説します。

情報のアップデートは自主的にやらないといけない

情報のアップデートを自ら行う必要がある点です。

監査法人やコンサルティングファームに所属している場合、最新の会計基準や税制改正などの情報が、社内研修や上司・同僚から自然と得られます。
しかし企業内会計士が働いている職場は、そのような環境が整っていないケースも多いため、自発的な情報収集が求められます。

たとえばIFRS(国際財務報告基準)や税法の改正などは頻繁に行われます。
知識が古くなると、企業の財務戦略に適切なアドバイスができなくなる恐れもあります。
常に最新の情報をキャッチアップする努力が求められるのは、明確なデメリットといえるでしょう。

会計士の情報収集の方法は多様です。日経ヴェリタス(日本経済新聞社)ワールドビジネスサテライト(テレビ東京)といった専門情報だけでなく、セミナー勉強会SNSなども重要な情報源になります。

評価に正当性を感じづらい可能性がある

監査法人やFAS、会計事務所では、一人のコンサルタントとして個人評価が中心となる監査法人などと異なり、企業内会計士は部署・チーム単位での評価の比重が高くなります。 そのため、評価の正当性や透明性に満足できない可能性があります。
専門性の高い業務を担当しているにもかかわらず、同僚や他部署と評価を比較したときに、不満を感じる可能性があることは、デメリットに感じる方もいます。

また、配属先によっては、業務範囲が限定されるため、経験や資格を活かせず、専門性を発揮できない場合もあるでしょう。
キャリアアップを考える場合は、自社の評価制度を事前に確認し、専門性を活かせるポジションを確保するのが重要です。

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企業内会計士に転職する際の注意点

企業内会計士として転職を成功させるためには、いくつかの注意点があります。
勇み足で転職して思わぬ後悔や失敗につながってしまっては、せっかくのキャリアに傷がついてしまいます。下記をぜひ参考にしてください。

キャリアチェンジの場合は慎重に検討する

監査法人やFAS、会計事務所から転職する場合、コンサルティングファームへの就職や独立など、企業内会計士以外にも複数の選択肢があります。
自身の理想とする業務内容ライフスタイル今後のキャリアビジョンなどを考慮し、慎重に検討することが重要です。

転職先に会計士の採用実績はあるか確認する

会計士の採用実績の有無にはメリットとデメリットの両方があります。
採用実績がある場合、すでにある程度業務フローが確立できている可能性が高いでしょう。一方、すでに同じポジションの社員がいることになるため、昇進争いが生じることもあります。

採用実績がない場合は、自分の裁量で業務を進めていけるので、理想とする業務フローを確立しやすくなります。
また、ライバルがいない点も人によってはメリットでしょう。しかし、経営陣に会計士雇用に関するノウハウがない場合、専門性を十分に発揮しにくい環境となる可能性もあります。

採用実績や自身が担当する予定の業務などは事前にしっかり確認しましょう。

やりたい業務と担当する業務に相違がないか確認する

企業によって、会計士に求める業務内容やスキルは異なります。これは、各企業が抱えている課題が異なるため、ある意味当然のことです。
中には帳簿管理のように、一般的な経理業務がメインとなるような求人があるかもしれません。一方で、「高い給与で専門家を雇うのだから」とかなり高度な業務を求める企業もあるでしょう。

これはどちらが良くて、どちらが悪いという話ではありません。大事なのは、自分がやりたい業務と企業が求めている業務がマッチしているかどうかです。

企業内会計士として転職するために

たとえ公認会計士の資格を取得していて、実績があったとしても、転職には「マッチング」という概念が存在します。必ずしも実力が高いだけで転職が成功するとは限りません。

実務経験だけでなく、転職先の企業に溶け込めるかどうかも評価軸の1つです。
とくに、事業会社はそれぞれの社風をもっているため、そこに共感できなければ働いていても充実感は得られませんし、社員の雰囲気次第ではまったく職場に馴染めないかもしれません。
今まで落ち着いた雰囲気の場所で働いてきた人が、いきなり体育会系の会社で働き始めてミスマッチにつながってしまうこともあります。

社風との相性については、求人票を見るだけではわからない部分もあるうえに、事前に結論を出すのも難しいでしょう。
その際は、MS-Japan転職エージェントサービスなどを活用して、企業情報を詳細に把握することが有効な手段となります。

MS-Japanは、転職希望先の社風や上司・同僚の雰囲気をお伝えすることが可能ですので、面接前にご自身に合うのかがわかり、効率的に転職活動ができます。

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事業会社への転職成功事例

公認会計士の専門性が活かせる一般企業に転職した事例

Hさん(28歳・男性)資格:公認会計士
転職前:Big4監査法人
転職後:20,000人規模の上場企業

監査法人に勤務中、残業が慢性的に続く状況に限界を覚え、最初は同様の職務内容を想定して会計コンサルティングファームへの転職を希望していました。
しかし、会計コンサルティングファーム限定で応募を続ける中でマッチングが難しかったことから、公認会計士を積極的に採用している上場企業への転職というアプローチに切り替え、転職を成功させています。

活動開始から10日で、IPO準備企業のCFOに転職した事例

Bさん(35歳・男性)資格:公認会計士
転職前:Big4監査法人
転職後:IPO準備企業

若い年代ばかりが事業会社への転職を成功させているわけではなく、30代後半を迎えても成功した例は少なからず存在しています。
35歳でIPO準備企業への転職を決めた方は、未完成な組織の管理体制構築に関わりたいという希望が明確であったことから、戦略的に転職を進めて結果を出しています。

MS-Japan
キャリアアドバイザー
濵田 翔平

もちろん、両名とも最初からうまくいったわけではなく、企業の選考過程や採用までの流れに関しては紆余曲折がありました。
それでも、最終的に希望を満たす会社への転職が成功したわけですから、公認会計士の事業会社への転職自体は不可能ではありません。

まとめ

企業内会計士として働くことで、当事者意識の芽生えやワークライフバランスの充実、評価の得やすさなど、さまざまなメリットがあります。
また多岐にわたるジャンルの専門家と関われるため、ビジネスパーソンとして視野を広げたい方にもおすすめの働き方です。

一方で事前に業務内容採用実績などを確認しておかなければ、思わぬ失敗や後悔を招くことにもなりかねません。
転職エージェントの情報提供やマッチング支援を活用し、企業内会計士としての転職成功を目指しましょう。

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この記事を監修したキャリアアドバイザー

濵田 翔平

大学卒業後、大手信用金庫に入庫。個人・法人営業及びビジネスマッチング等に従事。
MS-Japanに入社後は、横浜支社の立ち上げに加え、経理・人事・法務・経営企画・公認会計士・税理士等、幅広い職種のマッチングに従事。
2021年より東京本社へ異動後は、公認会計士・税理士・弁護士・社労士等の士業を専門とするJ事業部の管理職を務める傍らプレイヤーとしても従事。

会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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公認会計士が外資系企業に転職するメリットは何ですか?

公認会計士が外資系企業に転職するメリットは、「自分のペースで仕事ができる」「日系企業に比べて年収が高い」の2つです。 外資系企業は良くも悪くも実力主義のため、成果を出すことができていればプライベートの時間も確保しながら仕事をすることができます。 また、日系企業に比べて年収が高い傾向がありますが、福利厚生は日系企業の方が充実しているため、年収と福利厚生のどちらを重視するかを検討する必要があります。

公認会計士は外資系企業でワークライフバランスを重視した働き方が出来ますか?

外資系企業は日系企業に比べて実力主義な傾向が強いため、自分で労働時間を管理することができます。 また、今では日系企業でもリモートワークを採用している企業が多いですが、外資系企業は日系企業よりもリモートワークが普及しているため、働き方という意味でも外資系企業ではワークライフバランスよく働くことが可能です。

公認会計士は外資系企業でどのような部門に配属されることが多いですか?

公認会計士が外資系企業に転職する場合、「アカウンティング部門」もしくは「ファイナンス部門」のいずれかが有力な選択肢となります。 アカウンティング部門は、日系企業でいう経理部に当たり、ファイナンス部門は日系企業でいうと予算管理部門と経営企画部門のちょうど間ぐらいの立ち位置になります。

公認会計士が外資系企業で働くにはどのようなスキルが求められますか?

公認会計士が外資系企業で働くには、本国の経営陣や従業員とビジネス的な会話ができるレベルの語学力が必要です。 また、本国の所在地にもよりますが、US-GAAP、IFRS/IASといった海外の会計基準と日本の会計基準の違いをしっかりと理解しておく必要があります。 日本の公認会計士だけでなく、USCPAなどを取得しておくと外資系企業への転職には有利になります。

公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは高いですか?

公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは決して低くはありませんが、IFRS(国際財務報告基準)に関する知識と経験がある方には転職のチャンスがあります。 また、一定の英語スキルも必要にはなりますが、入社時に極端に高い語学力が求められるわけではありません。 尚、管理職を目指す場合は本国や他国の拠点とやり取りをするためにも、英語力は必須となります。

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