会計士の繁忙期は何月?具体的な業務スケジュールも解説!

公認会計士の就職先は多岐に渡るため、担当する業務やクライアントの属性により、繁忙期は異なります。
そのため、この記事では監査法人に所属する公認会計士に焦点を当て、大手監査法人の一般的な監査先である「3月決算の上場企業」を担当した場合の年間スケジュールについて解説します。
以下を参考にしていただくことで、公認会計士として実際に就業しているビジョンを鮮明に描きやすくなります。
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会計士の繁忙期に傾向はあるのか?
監査法人に所属する公認会計士の繁忙期は、クライアントの会計期間と密接に関連しています。
監査対象となるクライアントの多くは上場企業で、その大半が会計期間を3月期末・4月期初と設定しています。
そのため、年度末決算が3月、四半期決算が6月・9月・12月となり、これらの月の1カ月前後が繁忙期となる傾向があります。
会計士が担当する主要な業務として、年度末の「有価証券報告書」や「決算短信」、「四半期の短信」・「四半期報告書」の作成・提出があります。
これらの報告書は、企業の財務状況や業績を株主や投資家に公表する重要な情報を記したものであり、それぞれ提出期限が定められています。
「有価証券報告書」は、事業年度終了後から3カ月以内に提出しなければならないため、3月期末企業では、4月から6月にかけて対応に追われます。
また、「決算短信」は取引所によって事業年度終了後45日以内の提出が適当とされており、それ以前の30日以内の提出が望ましいとされています。
このため3月期末企業では、「有価証券報告書」と「決算短信」の対応が重なる4月中旬から5月初旬が忙しくなる傾向にあります。
さらに、「四半期報告書」は、四半期終了後45日以内に提出することが義務付けられています。
したがって、3月期末企業では、四半期決算月(6月、9月、12月)の翌月から1カ月半後にかけて四半期報告書の作成に追われます。
「四半期の短信」は、四半期報告書より前に取引所に提出することが適当であり、30日以内が望ましいとされています。
これらをまとめると、第1四半期の対応のために7月から8月半ばにかけて、第2四半期の対応のために10月から11月半ばにかけて、第3四半期の対応のために1月から2月半ばにかけてが繁忙期であるといえます。
有価証券報告書は期限内の提出が義務付けられており、やむを得ない事情がある場合は延長を認められるケースがありますが、忙しさを理由にした延長は認められません。
提出期限が適当とされていたり、望ましいとされていたりする短信も、期限内に提出しなければクライアント企業の信用が損なわれるなどのリスクが生じるため、公認会計士は忙しさに追われながらもスケジュール通りの対応が必須となります。
会計士の1年間の業務の流れと繁忙度合いを解説!
会計士の1年間の業務は、決算期や四半期末に向けた各種監査やレビュー、報告会への参加など多岐にわたります。
3月決算のクライアントの場合、1年間の監査スケジュールの始まりは7月頃です。
キックオフミーティングを開催してクライアント企業への理解を深め、情報を共有し、監査業務の進行方向や大まかな流れを含む監査計画を立てます。
7月中旬から8月上旬には、第1四半期のレビュー報告書の作成を行います。
四半期のレビュー報告書は、一般に公正妥当と認められる基準に沿って四半期財務諸表が作成されており、すべての重要な点において、その企業の経営状況を適正に表示していない可能性がないだろうことを監査人が感想を述べるものです。
その後、夏休みを挟んで、8月下旬から期中監査が始まります。
期中監査は年度末の監査の準備として重要な業務のひとつであり、内部統制の検証、支社や工場および海外子会社への現場視察やヒアリングを行うなど往査します。
9月には、経営者とのディスカッションを設け、監査業務の進行状況や、今後の方針などについて話し合います。
その後、10月中旬から11月上旬にかけては第2四半期のレビュー、11月中旬から12月下旬には再度の期中監査が行われます。
新年を迎え、1月中旬から2月上旬には第3四半期のレビューを行い、2月下旬から再び期中監査が始まります。
また、期末日付近には、実地調査や棚卸しの立会いなど、より具体的な監査作業を行います。
4月中旬から5月上旬にかけては期末監査が行われ、監査結果を取りまとめます。
その後、5月中旬に監査結果を監査役会に報告し、5月下旬から6月上旬には有価証券報告書のチェック作業を行います。
そして、6月下旬の定時株主総会をもって、1年間のサイクルが終わります。
このように、会計士の1年は四半期ごとのレビューや期中監査、期末監査など、決まったスケジュールに沿って進んでいくため、繁忙期も定期的に訪れます。
おおよそ四半期毎のサイクルで会計士の業務が進んでいくことから、四半期レビューの時期が繁忙期であるといえるでしょう。
なかでも、4月中旬~5月上旬、5月中旬、5月下旬~6月上旬にかけては、期末監査や監査役会への報告、有価証券報告書の最終チェック作業などに追われることから、一年の中でも最も忙しい時期となります。
会計士が長期休暇を取りやすい時期は?
会計士はおおよそ四半期毎のサイクルで1年のスケジュールが構成されるため、繁忙期が過ぎれば業務が落ち着く時期も訪れます。
具体的には、8月中旬~9月中旬と、11月中旬~12月下旬の2つの期間が業務の落ち着きやすい時期であり、この時期に合わせれば長期休暇も取りやすくなります。
クライアントが3月決算の会社の場合、6月後半くらいから7月に新年度の監査契約を結ぶことから、監査法人の期初は7月であることが多いです。
そのため、7月は年度末監査の対応が落ち着いているものの監査計画を立てたり、キックオフミーティングに参加したりと忙しくなる傾向があります。
その後、7月中旬から8月上旬にかけて第1四半期のレビューを行います。
第1四半期のレビューを終えれば、次の四半期レビューが始まる10月までの間は、比較的業務が落ち着くため、8月中旬~9月中旬に長期休暇を取る会計士も少なくありません。
ちょうど世間の夏季休暇の時期と重なることもあり、心情的にも休暇を取りやすい時期ともいえるでしょう。
11月中旬から12月下旬の期間も、四半期レビューが終わった後であり、年度末監査の準備が始まる前というタイミングで、業務が比較的落ち着く時期といえます。
この時期も多くの人々が年末年始の休暇を取るタイミングと重なるため、スケジュールを調整して長期休暇を取りやすいといえます。
しかし、外資系企業をクライアントに持っている場合には状況が異なります。
外資系企業は12月を期末としている場合が多いため、11月中旬から12月下旬にかけての時期は期末監査の準備で忙しくなることもあります。
今回、ご紹介したのはクライアントが3月決算の会社の場合なので、会計期間が異なっていれば休暇を取りやすい時期も異なってきます。
しかし、監査法人のクライアントは大半が上場している日本企業であるため、8月中旬~9月中旬と、11月中旬~12月下旬の2つの期間は休暇を取得しやすい、という状況はほぼ当てはまることでしょう。
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まとめ
クライアントの会計期間に合わせて期間厳守で業務に従事する会計士の1年は、通年通して慌ただしさを感じる傾向があります。
しかし、四半期ごとのサイクルで進むため、休暇を取りやすい時期が読みやすいことはメリットと言えるでしょう。
長期休暇を取りやすいとされる8月中旬~9月中旬と、11月中旬~12月下旬の2つの期間は、それぞれ盆休み、年末年始の時期と重なっているため、会計士業界以外の家族や友人とスケジュールを合わせやすいのも魅力です。
会計士といえば忙しいというイメージが先行しがちです。
しかし、これまでご紹介してきたように1年を通じてスケジュールを眺めてみると、四半期ごとのサイクルが決まっているため、オンオフのメリハリをつけてワークライフバランスを取りやすいといえるのではないでしょうか。


この記事を監修したキャリアアドバイザー

カナダ州立大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。求人企業側の営業職を経験した後、2014年にキャリアアドバイザーへ異動。
2016年からは横浜支社にて神奈川県内の士業、管理部門全職種を担当し、現在は関東全域の士業、管理部門全職種を担当。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 外資・グローバル企業 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ USCPA ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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公認会計士が外資系企業に転職するメリットは何ですか?
公認会計士が外資系企業に転職するメリットは、「自分のペースで仕事ができる」「日系企業に比べて年収が高い」の2つです。 外資系企業は良くも悪くも実力主義のため、成果を出すことができていればプライベートの時間も確保しながら仕事をすることができます。 また、日系企業に比べて年収が高い傾向がありますが、福利厚生は日系企業の方が充実しているため、年収と福利厚生のどちらを重視するかを検討する必要があります。
公認会計士は外資系企業でワークライフバランスを重視した働き方が出来ますか?
外資系企業は日系企業に比べて実力主義な傾向が強いため、自分で労働時間を管理することができます。 また、今では日系企業でもリモートワークを採用している企業が多いですが、外資系企業は日系企業よりもリモートワークが普及しているため、働き方という意味でも外資系企業ではワークライフバランスよく働くことが可能です。
公認会計士は外資系企業でどのような部門に配属されることが多いですか?
公認会計士が外資系企業に転職する場合、「アカウンティング部門」もしくは「ファイナンス部門」のいずれかが有力な選択肢となります。 アカウンティング部門は、日系企業でいう経理部に当たり、ファイナンス部門は日系企業でいうと予算管理部門と経営企画部門のちょうど間ぐらいの立ち位置になります。
公認会計士が外資系企業で働くにはどのようなスキルが求められますか?
公認会計士が外資系企業で働くには、本国の経営陣や従業員とビジネス的な会話ができるレベルの語学力が必要です。 また、本国の所在地にもよりますが、US-GAAP、IFRS/IASといった海外の会計基準と日本の会計基準の違いをしっかりと理解しておく必要があります。 日本の公認会計士だけでなく、USCPAなどを取得しておくと外資系企業への転職には有利になります。
公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは高いですか?
公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは決して低くはありませんが、IFRS(国際財務報告基準)に関する知識と経験がある方には転職のチャンスがあります。 また、一定の英語スキルも必要にはなりますが、入社時に極端に高い語学力が求められるわけではありません。 尚、管理職を目指す場合は本国や他国の拠点とやり取りをするためにも、英語力は必須となります。
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